年子で2人目を妊娠。嬉しい反面戸惑いもあった
洗面台の水垢とか、山盛りになったゴミ箱とか、そういうものが私を消耗していった。
それらは少ない時間と労力で片付くのだけれど、ご飯を準備したり、子供をお風呂に入れたり、生活するために最低限やるべきことが多すぎた。
ここのところ自分の周りの空気だけずっしりと、やたら湿度が高いように思えた。
年子で2人目を妊娠したのは半分計画通りで、半分想定外だった。夫と2人目を作ろうと話してすぐに妊娠した。妊娠は嬉しい反面戸惑いもあった。正直こんなにすぐに妊娠できると思ってなかったのだ。
一番の心配は上の子がまだ一歳になったばかりで手がかかってしょうがないこと。他にも2つ、心配な要素として、私が育休を終えて仕事に復帰したばかりであること。そして、私が一型糖尿病を患っていることがある。
わかってる、わかってる。育児、闘病、仕事、それを踏まえてももう1人子供が欲しかった。
持病はきちんと治療が出来ていれば妊娠、出産できる病気だ。妊娠中の治療は大変だが、子供を持つためならがんばれる。
子供は授かり物だから、仕事の状況よりも家族計画を優先すると決めていた。
準備も、納得も、覚悟も出来ていたと思ってた。
でも妊娠8ヶ月、産休まであと少しのところで限界がきた。
血糖値が高くなったある晩、途端になにもかもが嫌になって号泣した
1週間前に娘が熱をだした。仕事の残タスクの処理と引き継ぎはスケジュールにゆとりを持たせたはずだったが、娘の看病の他にも自分の見積りの甘さもあって、産休に入るまでにタスクを全て完了できるかギリギリのラインだった。夜娘を寝かしつけてから仕事をする日々が続いた。
復帰して半年で再度産休に入る気まずさを少しでも払拭するために、残タスクは0で産休に入りたい。じりじりとした気持ちで仕事をした。
夫は家事育児を分担してくれているが、私よりも仕事が忙しく、私と同じく余裕はなかった。
お腹が大きくなって腰痛が酷くなった。夜中寝返りを打つ度に腰の痛みで起きてしまう。妊娠中は疲れやすく、娘と遊ぶとすぐに疲れてしまって思うように遊んであげられなかった。不満を持つ娘の世話をするのは大変だった。
ある晩、血糖値を測ったらすごく高かった。妊娠中にあるべきでない数値だった。すぐに薬を投与し、副反応の低血糖になるかもなと思ったら途端になにもかもが嫌になって号泣してしまった。
「大丈夫?」と声をかけてきた夫はびっくりしてた。
きっと世の中のお母さんはこれくらいこなしてるし、がんばりたいと決めたことだからがんばりたかったけどしんどいんだ。私は夫に泣きながら話した。
夫は私の話を聞き、自分にできることを提案してくれた。
泣きながら、私は無責任で、お母さんとして劣等生で、みっともなく恥ずかしいと思った。
娘の感情からの気付き。あの時泣いたことは、自分の覚悟に反さない
今日、娘のおやつに蒸しパンをあげた。
娘が食べている途中で遊び出したので、私は「食べないなら食べちゃうよ!」と言って蒸しパンを一欠片ちぎって食べてみせた。
娘はびっくりして、私に取られまいと蒸しパンをぎゅっと自分に寄せた。そして少しの間私をじっと見ると、一塊を私に差し出して「どーぞ」と言う。私が娘の優しさに嬉しくなって蒸しパンを受け取ると、次に娘は泣き出した。
あまりの理不尽さにびっくりした。だけど、彼女にとって、「ママに蒸しパンをあげたい」と「私の蒸しパンが減ってしまって悲しい」という気持ちの存在は矛盾しないのだろうと納得した。ただ、蒸しパンが減ってしまって悲しくて泣いた。
私は彼女の感情のあり方が、シンプルでとてもいいと思った。
あの日ひとしきり泣いた後、私は夫にもう大丈夫、またがんばれる、と言った。夫は私の精神面を気にかけてくれるようになった。無事出産し、今は育休中の夫と2人の子供を育ててる。
納得してること、覚悟したことでももう嫌だと思うことは矛盾しない。あの時泣いたことは自分が決めたこと、覚悟に反さないと思う。だから恥ずかしいことでもない。私は今、あの時の、泣いている私の背中をさすってあげたい。