真っ暗な道でタクシーを待つ。深夜帰宅に恐怖心を抱かない人はいない

極端な平等思想はかえって毒だ。

新卒で入社した会社は接客業のため、バイトと社員含め全員シフト制だった。
早番は7時から、遅番は24時半まで。
店舗異動後、私の住んでいる場所から店舗までは1時間ほどかかるようになった。
遅番ともなれば家に辿り着くのは26時を超える。
当時まだ新入社員だった私は、店長が組んだシフトのままほとんど遅番にもかかわらず、何も言わなかった。

だが深夜帰宅に恐怖心を抱かない人はいないだろう。
終電もないため、真っ暗な道でタクシーが来るのを待つ。周りには酔っ払いがうろついており、声をかけられないように目を合わせない。
1時間もタクシーに乗せられる。もしタクシー運転手がおかしい人だったら?そう思うと家の前で停車はできない。
自宅へは少し歩かないと帰れない。そうなると道中の恐怖がぶり返す。実際、自宅前の電柱に男性が隠れていた時は心臓が止まるかと思った。
しかも次月からはタクシー帰宅も不可になるため、どうにか終電で帰らないといけないと会社から言われたらしい。

ほかの女性からは文句なし。わがままを聞くことはできないという

さすがに怖くなり早番の多い男性の店長に遅番を減らしてほしいと言ったが、無理だと一蹴された。
理由はほかの女性スタッフもそれで文句を言わないから、一人だけそのわがままを聞くことはできないという。
ほかの店舗の女性社員もそうしているし、誰も文句は言っていないと言った。
私一人にそういった対応をすれば、当時の女性スタッフの年齢層が40代以上だったため、私にだけそういう対応をするけど、あなたたちは若くないから必要ないでしょ?と言っているようなものになるらしい。

女性スタッフがどうこうという話ではない。私はそこも踏まえて調整しろと言っているのだ。
ほかの女性スタッフの目を気にするのであれば、そこも調整しろよと。女性の多い職場ではない。男女比率はほぼ同じだ。
同じであれば、全員の意見を加味したうえでシフトを組めばいいだけだ。
それに、ほかの店舗が同じ就業時間だとは限らない。実際、テナント店舗は22時で終わるところもある。
そこも含めて、ほかの店舗の女性社員は文句を言っていないからお前も従えと言っているのなら、終電時間も読めなくて大丈夫かと言いたくなる。
深夜に一人でいることを怖くない人はいない。それに性別は関係ないし、年齢も関係ない。そんなことはわかっている。
そうではなくて、極端に一律同じ対応をすることによって下方修正されるのはおかしいとは思わないのか。

文句があるのならもっと上の人間に言ってみろ、という無責任

同じように働けているんだから、文句は言うなということだろうか。
女も男と同じように働け。それが男女平等だろうというのは、女性が生きているだけで感じる恐怖を理解してから言ってもらいたい。

夜歩く時、後ろに誰かいるだけで死ぬかもしれないと思うこと。タクシーも安全じゃないと警戒していること。家の近くに来ても気を抜けないこと。
同じであることをかかげて、文句があるのなら自分ではなくもっと上の人間に言ってみろ、という無責任。

どうせできないだろうという考えが透けて見えた。もし私に何かあっても会社の方針だから自分は関係ないという言い逃れも。
結局、通勤時間の長さと退勤時間が深夜であること。店長の耳の塞がった態度と相まって適応障害になり退職した。

社会人5年目になった今なら全スタッフにも確認するし、何なら人事にだってかけ合える。
それで叱責を受けたとしても、重大なことが起こってから後悔するよりはずっとマシ。
結局のところ、あの店長は現場の声よりも会社のご機嫌を取ったのだ。方針に逆らえと言っているわけではないのに、頭ごなしに否定して意見の尊重すらしなかった。
かつて新入社員だった私に言いたい。上司の言葉が全てじゃない。
わきまえるな。どういう結果になったとしても、同じ恐怖を持つであろう人間を増やすなと。