上昇志向の強い上司の退職も、次の会社は決まっていないらしく…

その人は、会社を辞めるには会社からの期待も厚かった。プロパー40歳、少し前にミドルマネージャーに昇格して、しっかり実績も残していた。困難な状況でも、いつもにこにこしていて、解決に前向きで建設的な議論を行うため、上司にも部下にも信頼されている存在だった。上昇志向も強く、誰から見てもたくさん働いていた。

優秀な方だから引き抜かれたのかもしれない、他にやりたいことができたのかもしれない、と思っていたので、次の会社は決まっていないらしいと聞いて驚いた。
先輩たちが「あそこは共働きだし奥さんの方が年収が高いから、多少お休みしてもお金があるんじゃない?」と言っていたが納得できなかった。私はその人が仕事好きだからいつも前向きなんだと思っていた。

目にしたのは、桁違いの退職金。上司の退職理由の辻褄が合っていく

ある日会社の福利厚生規定を見ていて、ある項目が目に入ってきた。
「早期退職支援制度」
勤続年数が一定以上の社員で、若い年齢で退職する人に、通常の退職金に加えて退職金が支給される制度だ。その制度が始まる年齢かつ一番支給金額が高いのが40歳。ちょうどその人が辞めたタイミングと同じだ。

桁違いの退職金支給額を見て、一気にいろんなことの辻褄が合った。上司は経済的自由を手に入れたんだと気づいた。そう思うと、思い当たる節はいっぱいあった。
本人はマネージャークラス、奥さんはそれ以上の収入があると噂される共働き夫婦でありながら、ブランド品を持っているところを見たことがないし、福利厚生の、特に換金できるポイントバックがある会社のイベントは他の部署からもあの部署がすごいと言われるぐらい飛び抜けて参加していた。

それぞれ「子どもに手がかかるから」「自分が頑張れば部員のモチベーションも上がる」という風に説明していたし、みんなそれで納得していた。言い方は悪いかもしれないが、ケチに見えないように立ち回るのが本当に上手だった。全ての辻褄が合っても失望するどころか感動が上回った。

資産を目標に働くことの真意を知った私が踏み出した第1ステップ

改めて考えると、資産を目標に働くことが、その人が前向きに働き続けられる理由になっているのではないかと思う。
計画を立て、40歳になったらいつ仕事を辞めてもいいと思いながら仕事ができれば、どんな困難なことがあっても今だけの我慢だと思えるだろうし、最悪の場合いつ辞めても大丈夫なくらいのお金があれば、物怖じしない選択ができるので仕事の結果にもつながりやすい。
経済的な自立の準備ができていることで、心に余裕ができ、仕事のパフォーマンスも上がることが特に私にとっての気付きだった。

このことがあって、今まで本当に無頓着だった資産状況を見直した。会社の確定拠出年金の内容を見直し、投資用の口座を開設し積み立てを始めた。また、いろんな口座に散らばっている資産状況が把握できるようにアプリを入れて収支を見える化した。

まだ第1ステップだし、その人には全然及ばないだろうが、少しだけ成長した気がする。これからお金の力を借りて、少しずつ、その時その時で自分がしたい選択ができる強い自分になっていきたいと思う。