特集:「わきまえない女」の日常

女性の身体に傷をつけた代償は結婚らしいけど、結婚しない人生もある

「わきまえない女」の日常

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「結婚前の身体に傷なんてあったら」と男性に言われたことがある

私の身体は傷だらけだ。
「傷だらけ」と言っても、他人の身体にどれだけの傷があるかなんて知らないし興味がない。だから、私の身体は他人より傷が少ないかもしれないし、多いかもしれない。
「結婚前の身体に傷なんてあったら……」と男性に何度か言われたことがある。
私は戸籍上女性である。
女性である私の身体に傷があってはいけないのだろうか?それが理想の女性像なのだろうか?
辻愛沙子賞を見て書きたいと思った。
綺麗な身体を持った女性を、世の男性は求めているのだろうか?欲しいのだろうか?
(求める、欲しい、という言い方は男性主導な気がしてなんだか嫌だが。女性も女性で恐らくこういう身体が良いという理想がある人もいるので、何とも言えない部分はある)
理想の相手の身体に「傷がないこと」と掲げている人がどれほどいるだろうか。
「結婚前の身体に傷なんて」。何故か男性にしかこのセリフを言われたことがない。

女性の身体に痕が残るような傷をつけたら、その代償は結婚らしい

学生時代、飲食店のキッチンで働いていた。
キッチンの仕事は常に危険と隣り合わせだ。
包丁で手が切れる。鉄板、オーブン、油で火傷する。油が溢れているところは、滑って転ぶ。
食器が割れれば割れた破片で手を切る可能性がある。食器の洗浄機で火傷する。
ありとあらゆる危険が潜んでいる。
揚げ物を揚げていることが多かった私は、ある時、たまたま火傷しそうになった。その時社員の男性に、
「気をつけて!火傷して痕が残っても責任取れないから……。俺結婚してるし」
と言われた。
他の社員の男性にも言われた覚えがある。男性の学生アルバイトにはそのようなセリフを言っていなかった。

私は、女性だから言われた。恐らくそうだ。
痕が残れば責任を取る。女性の身体に、痕が残るような傷をつけるなんてもってのほかだから?その代償が結婚らしい。
何故そうなるか、そういう考えに至るか、疑問で仕方がなかった。
代償がケガの治療費だったらわかる。
しかし、結婚だそうだ。
責任は結婚で解決されるものだろうか?
本人の意思はどこへ行ったのだろうか?
ケガの痕が残れば、私の価値は下がるのだろうか。誰も私を嫁にはしないのか。
思考が追いつかなかった。

傷跡は要らないが、結婚しない人生もあるってことを知って欲しい

他の仕事先でも言われた。
段ボールで手を切った時のことだ。
「大丈夫?ケガはない?男なら傷つくって痕が残っても……だけど、女の子はね……しかも嫁入り前は……」
と男性社員に言われた。
「俺責任とってあげれないし」
はい、出ました!責任取り文句。
傷痕が理由で、責任として結婚という考え。
そして学生時代には感じなかったものが、大前提の「嫁入り前」である。
必ず女性は結婚するわけではないのに、必ず結婚すると思われているわけだ。
「いや、責任とってもらわなくて良いし……しかも結婚するかどうかわからないし」
と、口に出そうだったが我慢したことを覚えている。
結婚しない人生もあるってことを知って欲しい。
だからといって、傷跡は要らないが。

私の身体には、たくさんの傷跡がある。一般的には、傷だらけかもしれない。
両手の甲には火傷痕がある。指にはところどころ、タンスで挟んで擦った傷跡がある。
左肘には高校時代の運動会でできた擦り傷の痕がある。
左膝には、幼稚園の頃、遠足の時、煉瓦の上を走って転んだ時の傷跡が2箇所もある。
他にも諸々ある。
綺麗な身体にこしたことはないかもしれない。
しかし、傷だらけでも私は私だ。
傷痕が理由でもし振られるようなことがあれば、そういう人と付き合わなくて良かったのだと思う。
傷痕が結婚に影響するという現実。
私は、相手に傷痕がないことを求めない。

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