「俺、ハーフモデルがタイプなんだよね」
この言葉は私を動けなくした。
ツイッターで友達とやり取りをしている、ある男性の発言に目を奪われた。プロフィール画像に写るその男性は、その発言を許されるほどかっこよかった。
彼の隣に似合う女性は、きっと日本人離れした女性なのだろうって思ってしまうほど。

日本人なのに日本人離れなんて馬鹿馬鹿しいけれど、鏡の中の私は奥二重で、平らなおでこ、筋のない鼻に低い身長だった。
「かっこいい人の目に映るには可愛くないといけないんだ」と心に深く刻んでしまった。
その頃から私は写真も鏡も、電車で私の方を見てる人も怖くなった。

「自分を変えたい」と思い二重整形をし、出来る事はなんでもした

高校2年生の夏休み思い切って二重整形をした。
思い立ったら行動してしまう性格もあって、親には「逆まつげの手術だ」と言い、美容整形外科へ行った。未成年の私は母の代わりに叔母にサインをしてもらった。
可愛くなりたい。
その思いだけを持って手術台にあがった。痛かったのか、ダウンタイムは家に引きこもって何をしていたのか、何も覚えていない。
ただ、鏡を見た時、いつも「自分を変えたい」とだけ思ってしていた私は人生が変わった気がして嬉しかった。

そこから無理なダイエットも、鼻を高くするために家の中で洗濯バサミで鼻をつまんだ事も、肌のために皮膚科へ行くのも、出来る事はなんでもした。
自分を好きになる為に。いつか彼の視界に入る為に。
私はツイッターで自分の顔を載せるようになった。
そこから、彼と出会うのは早かった。
彼が友達に私を紹介してほしいと言っていたのだ。
私は彼の恋人になって間もなく「俺ブスが嫌いなんだよね」という彼の言葉に安心した。
私はブスじゃないんだ。

失恋し、二重整形の糸は取れ、鏡には下を向き猫背で歩く私の姿が映る

彼と付き合って半年後、私はアメリカへ留学する事になった。
「俺、待ってるから」と彼は言い、私がアメリカへ着いて1ヶ月後に浮気していると分かった。
いつからなのか分からない。
でも、私自身を好きでいてくれているわけじゃないなんて、初めから分かっていた。
それは私にも同じ事だった。
泣いて泣いて、ある日、二重整形の糸が取れた。
当然アメリカにはアイプチなどが売っていなかった。
二重ではない私は、人と目を見て話す事への恐怖に後戻りした。
ふと鏡を見ると、下を向き、猫背で歩く私が映った。
「英語を話すようになりたい」そう決めて、留学しているのに、なにをしているんだろう。自分を今までで1番嫌いになった。そして、失恋した時よりも泣いた。

次の日、私は前を向いて歩いてみた。
太陽の光が明るいと気づいた。私の容姿など誰も気にしていなかった。
教室へ入ると、スペイン人の友人が「美しい目だね」と私を褒めた。
カラーコンタクトがないと、人と目を合わせられなかった私にとって、衝撃的な言葉だった。

自分を好きになるには、まず1番近くにいる私の中身を変えるしかない

私は私を受け入れるために、私が1番私を好きでいられるように、私が私を1番信用した。
私は私の顔を見て生活していない。
常に、誰かの顔や景色が目に映る。
自分を好きになるには、まず1番近くにいる私の中身を変えるしかない。
「可愛くないから、振られた」
「つまらないから、会話に入れてもらえない」
「醜いから、優しくされない」
と私に声をかけるのは私の中身だと気づいた。

それなら、私は中身を変えるために沢山勉強した。
英語を話せるようになれば、たくさんの人の人生を聞ける。
世界史を学べば、自分の小ささが知れる。
哲学を理解すれば、相手の気持ちに寄り添える。
沢山本を読み、私はもう前の私ではなくなった。
私が私にかける声も変わった。

日本に帰り、私は沢山の過去の私がいると気づいた。
完璧に化粧をし可愛く着飾っているけれど、心の中の自分自身が自分自身を愛せていない女性たち。
帰国して1ヶ月経たないうちに彼から連絡がきた。
私はもう誰にも私の人生を邪魔されない。
全ての女性に気付きのタイミングを。