コンプレックスを超えて、自慢できる姿をキープしたい

趣味がランニングや筋トレだと言うと、大半の男たちが「もっと太った方がモテるよ」「少しぽっちゃりした方がかわいいよ」「筋肉ムキムキの女の子は嫌だよ」と口にする。
彼らのなかでは『ランニング=ダイエット』『筋トレ=ムキムキ』という等式が成り立ち、その行動は男に好かれるため、モテるために行われているものになるらしい。
なんて幸せな人たちだろう。
昔から細身の私にこれ以上のダイエットは必要ない。しかし、健康は維持したいし、スラっと綺麗に伸びた脚もキープしたい。
自分の1番好きな体の部位は?と聞かれたら、私はすぐに「脚」と答える。そのくらい自慢の脚だ。

スレンダーな体と引き換えになかなか手に入れられないものもある。おっぱいだ。
私のおっぱいはほぼ平らだ(おっぱいと言うにはだいぶ量が足りない気がする。胸と言った方がピンとくるのはなぜだろう)。申し訳程度の膨らみがあるだけ。ブラジャーを付けている意味があるのかすら怪しい。かわいいと思って手にした服が、胸がないせいで着こなせないということもよくある。

飾りだけの「ジェンダー平等」。ハラスメントまみれの職場での出来事

「豊胸しなよ」
私のペタンコな胸と隣の先輩の豊満なおっぱいを見比べた男性上司の口から出たその言葉に、耳を疑った。彼のお腹周りには立派なうきわ肉がびっしりとついている。
「人のおっぱいより、自分の腹を気にしろ」という言葉はごくりと飲み込んだ。

私が社会人になりたての頃、世間ではパワハラ、モラハラ、マタハラ等様々なハラスメントが問題として取り上げられていた。にも関わらず、新卒で入社した飲食店では先輩が後輩のことをけなしたり、女性蔑視とも取れる発言が常態化していた。
その内容は容姿、性格、行動等様々だ。休みの次の日には「彼氏とセックスしたか?」と当たり前に聞かれ、「たまには他の男ともヤレよ」とまで言われる。余計なお世話だ。
まぁそこら辺は男女平等。同期の男も性癖について開けっ広げにすることを求められていた。

28歳で結婚を機に退職した先輩は「売れ残らなくてよかったな」と男性上司に声を掛けられていた(言ってる本人は30歳超えても結婚してないのに!!)。そんな発言も許されてしまう会社だったから、「豊胸しなよ」なんて言葉も日常会話の一部だった。
ほんのつい数ヶ月前まで「ジェンダー平等」について卒論を書いていた私は「まさに机上の空論!!」と思った。東京の従業員100人ほどの飲食店には、ジェンダー平等なんて考えは1ミリもなかった。
入社試験のときは女性も活躍できるような会社にするなんて言っていたが、そんなのは社長が口先だけで言っているだけで現場の人間は女性社員はアシスタントくらいにしか思っていないようだった。

入社して半年がたった頃、「男は少しぽっちゃりの女が好き」ということを理由に、賄いの量を他の人より2倍多く盛られるようになった。
仕事の前にそんなに食べたくない。腸を始めとした私の内臓たちは、食べすぎるとすぐに活発な動きを始めてしまう。そんな状態で仕事なんて!!
しかし、そんなことはお構いなしに、ご飯は日本昔ばなしのようにこんもりとお茶碗に盛られ、「残すなんてありえないからな」と私の前にドンっと置かれる。「私がトイレに篭っても文句言うなよ」と思いながら箸を手にした。
その隣で、ご飯のおかわりをしようとした前出の豊満なおっぱいをお持ちの先輩は「お前は痩せたらモテるよ」と言われて、手にしたしゃもじを取り上げられる。
言っておくが彼女は決してデブではない。いたって平均的な体型である。むしろ一般的に考えられる厚生労働省が定める健康体重より軽いだろう。

お前らの望む体系に合わせてたまるか。私は私のなりたい姿を追及する

男にとってのモテる体に迎合してたまるか。なりたい姿を目指して何が悪い。
モテたくて走るんじゃない。健康的な体を維持し、私が綺麗だと思う体型をキープするために走るんだ。
豊満なおっぱいに憧れるけど、それは男性が望む体に自分を合わせるためではない。私が「素敵だ」と思う胸元がざっくり開いたワンピースを綺麗に着こなしてみたいからだ。
だから私は今日もランニングと胸の筋トレに励む。