新卒で入った会社を半年ちょっとで退職。脳内にスモッグのように漂う何か
昨年10月末、退職した。新卒で入った会社を半年ちょっとで辞めてしまった。
やりたいことがなかった。将来の夢も目標も結婚願望もなかった。
言葉を選ばずに表現するのなら、ずっと横になっていたい。希死念慮とまでは呼べない何かが、脳内をスモッグのように漂っている。
まだ在職中だった頃、中国で「寝そべり族」なる最低限の生活を送ることを志す若者が増えているというネットニュースを見て、ああ私のことだと思った。
学生の頃はよかった。勉強さえしていればそれだけでよかった。
今思えば、勉強させてもらっていたのだ。なんせ、高校受験のときも大学受験のときも塾に通わせてもらっていた。
私は親のお金で、都内のそこそこ名の知れた大学に通い、都内のそこそこ名の知れた企業に就職した。当時の「就活の軸」は、当面潰れる心配のない規模の会社で、正社員として安定して働けること。給与より休日、出世なんてしなくていい。
そんな向上心のカケラもない志望動機をそれっぽく装った結果、上場企業の企画職として採用された。
慢性的な人手不足による、恒常的な時間外労働。先輩も私も退職した
入社してからは、「現場を知らないと企画の仕事もできない」と言われ、少なくとも2年間は営業を務めることになっていた。「2年我慢すれば本社に行けるから。本社は残業もないよ」という言葉を信じていた。支社での営業に耐えながら、本社でやりたいことを見つけていきたいと素直に思っていた。それが4月。
「この支社は人間のいるべき場所じゃない」
私のチューターだった先輩が泣きながら引き継ぎの資料を作っているのを見て、同じ課のベテランの先輩がかけた言葉だった。
慢性的な人手不足による、恒常的な時間外労働。営業への負担の大きさ。チューターの先輩の、それ以外の辞めた先輩たちの、そして私の退職の大きな要因だった。
人が根本的に足りていないから人が休職する、退職する。更に人が足りなくなる。分かりやすい悪循環だった。駅から支社に行くまでの間に、踏切があった。飛び込む前に辞めてよかったと思っている。
辞めたこと自体は後悔していないけど、転職活動はうまくいっていない
辞めたのが、10月末日。辞めたこと自体は後悔していない。リモートワークも導入されていなかったから、仕事しながら転職活動なんて到底できなかった。
1年に満たない期間で辞めたことに後ろめたさで眠れない日も続くけれど、あの頃、電車に乗りながら涙でマスクをぐしゃぐしゃにしていた自分を否定したくないと思っている。
これを書いているのは1月下旬。転職活動はあまりうまくいっていない。やりたいこともなりたいものもないので当然だ。
それでも転職エージェントに相談しながら、「やりたい」も「なりたい」もないのなら、「できる」を増やしていけるような将来設計を考えている最中だ。
新年度には働き始められるといい。就職はゴールじゃないけれど、人生にもゴールなんてない。夢も目標も結婚願望もないけれど、好きな音楽や本はある。卒業旅行で行くはずだった海外にも行きたいし、観たい舞台も楽しみな個展もある。感染症の流行で中止になるかもしれないけど、2月末には既にチケットを購入したライブがある。
それまで生きていようと思った。
今夜もなかなか寝付けないので、本を読んで無理やり寝る。太宰治の『葉』が、退職してからの愛読書だ。