母からお金を借りたときの罪悪感が、私をお金と家族に向き合わせた
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お金は入ってくるけれど、すぐ魔法が解けたようにすぐなくなってしまう。
なぜ、すぐ消えてしまうの?と小さい時からずっと思っていた。
私の家庭は、小さい時から父の仕事が定着していなかった。
父は転職を繰り返し、母が苦労してお金のやりくりをしていた。
4人兄妹の3番目の私はお金はたくさんあると思っていて、お小遣いを母にねだりもらっていた。
私が高校生の時に、兄が母にお金を貸している姿を見た。
母に尋ねると、こう答えた。
「うちは家計が苦しいから、お兄ちゃんにお金を貸してもらったの」
その時、私は「ああ、うちはなんでお金がないんだろう」とガッカリした。
他の家はお年玉やお小遣いをたくさんもらっていて、なぜうちは少ないのかようやく分かったから。
その時、父が転職を繰り返しているからだと気づいた。
父はなんのためにそんなに転職をするのか?
兄にお金を借りていることを知っているのか?と。
いつの間にか父のことを憎んだ。
父みたいになりたくないとまで思った。
自分も社会人になり、お金を得ることの大変さと社会の波に揉まれた。
お金が入ってきても支払いやローン、食費などで全て消えていった。
ある時、身体を壊し働けなくなり仕事を辞めた。
何もかも忘れたかったので、3ヶ月間仕事をせず旅や好きなことをした。
当時、貯金は雀の涙だが、それでもまだ大丈夫だと思っていた。
それから知らない土地で1人で生活したいと思い、働いたがお金が足りなくなった。
私は母に相談してお金を借りた。
その時、「私は父と同じことをしているんだ……」と悟ってしまった。
お金を借りることへの罪悪感と自己管理能力の低さに自分を責めた。
なぜ自分はできないのだろう?と。
周りは貯金しているのに、私は全然できていない。
自分ってなんなんだろう。
私は価値なんかないと思ってしまうことが多くなった。
そしてこれから先、お金のことを何も知らないで終わりたくないと。
それからお金の勉強や銀行員の友人に相談をして、お金について学んだ。
お金を増やす方法や運用方法。
学んだことで自分でお金を得ることは非常に大変なことであり、ありがたいことであることに気づいた。
そしてお金は一種のツールであり、私の価値を決めるものではないこともわかった。
世の中、自分の力でお金をもらっている人もいるのは事実であり、明日の生活ができないくらい悩んでいる方もいる。
その中で私はお金がたくさん欲しいのではなく、慎ましく暮らしていけたら私は幸せなんだということがわかった。
比べることがいいことでもないと。
そして周りに感謝することも覚えた。
父を憎んだ時もあったが、父は父なりに頑張って仕事をしていた。
母は、4人の子供を育てるために家計をやりくりしてくれた。
そして兄は、自分達を育ててくれている両親を助けるためにお金を貸してくれたんだと。
お金を通して、人に感謝すること、自分のことを知ることができた。
なくなることに対して、不安もあったがやりくりをしうまく付き合っていくことで、増やすこともできる。
今、私はある目標のために収入の半分を貯金している。
お金は自分を高めることができるツールでもある。
そのことを学べたことにお金にも感謝している。
これからも私は、お金とうまく付き合って生きていく。
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