社会に出て丸2年が経とうとしている。そして自分で働いてお金をもらう経験を初めてしてからはもう6年が経つ。
大学時代は短期のものを含めると8種類のアルバイトをし、そして社会人わずか2年目で、その名を知らない日本人はいないような有名企業を辞めた。

それが偉いわけでもなんでもないけれど、ずっと同じバイトを一筋でやってきた人や転職をしたことのない人よりはちょっとだけ、仕事と自分の在り方について考える機会が多かったかな、とは思う。

私にとって仕事は、自分の在り方や目指すものを見直す指標

何のために仕事やバイトをするのか。もちろん、生活していくため、あるいは遊ぶためのお金が必要だからっていう根本的な理由がしっかりある。
それでも、その手段がなんでもいいわけではない。18歳の私も23歳の私も、バイトや仕事を通して自分の仕事に対する価値観、将来どうありたいかを考えていた。だから、私にとって仕事は、自分の在り方や今目指すものを見直す指標なんだと思う。

例えば、8種類もしたバイトのうち最も期間が長かったドラッグストアのレジ打ちでは、こんなことを思った。
私のバイト先はショッピングモールの中の一テナントで、他のお店に比べて時給は安かった。それでも店長さんがとても親切で、時間には必ず帰らせてくれたし、決してシフトに多く入っているわけではないのに休みだって自由に取らせてくれた。
この経験を通じて、多少お給料がよくなくてもホワイトな環境で働けるっていいなあと思った。残業がないことと好きに休めたのは学生のバイトだからなんだろうけど。

先の見えない、関心も持てない仕事で心が死んでしまいそうだった

最初の会社で働き始めてすぐに、私は自分がひときわ興味を惹かれるものを見つけた。これを仕事にすることができたらどんなにいいだろうと思うようなことを。
そしてその思いは、典型的な日本企業の年功序列制度や、3~4年スパンのジョブローテーションを待っていられるほど悠長なものではなかった。

反面、現実は厳しい。やりたいことが明確にありながらも、自分の希望していない目の前の仕事に従事し続けることが、私にとってはとてつもなく苦しかった。
ただただ仕事が嫌と言うと甘えるなと言われそうだけれど、やりたいことがはっきりしているのにそれを今いる場所でいつ叶えられるのか、そもそも叶えられるのかどうかすらもわからないまま、何のためにやっているのかわからない仕事を続けていたあの時の私は、屍のようだったと思う。
実際、最近顔が暗すぎだと同期に言われてしまった。

そんな苦い経験を通じて、私は自己実現の欲求がとても強いんだと気づいた。
大企業の看板と手厚い待遇を捨ててでも、自分のやりたいことに従事できることに魅力を感じる。これも、時給が安くても自分がいいと思うところで働きたいと思った学生時代と同じだと思った。

社会人としての経験が全く足りていないのに、という思いはずっとつきまとっていた。最後までその思いは消えなかった。
転職が当たり前の世の中になり、新入社員の3割が3年以内に辞めると言われているとはいえ、2年目で辞めた私を世間はどう見るだろう。今後の社会人人生で信頼を得られるんだろうか。後悔しないだろうか……。

経験は自ら掴むもの。興味のあるなしで原動力は大きく変わった

でも、晴れて転職してわかった。逆だ。

大きな組織で、当事者意識も興味も持てない仕事をしていたあの時の私は、目の前の仕事に手いっぱいになりながらもずっと違う方向を向いていて、学ぶべきことも学んでいなかったと思う。
しっかり向き合う姿勢を持てなかった自分の非は認めるけれど、そんな余裕はなかった。心が死んでしまいそうだったから。

それが今は、自分の1番興味があることに従事していて、しかも少人数だから自分がやらないと回っていかない。単なる作業ではなく、頭を使うことも多い。
そういう風に働くことの楽しさと、いろんなことを知って成長している実感といったら。前の会社の1年半で私は何を学んだんだろうというくらいいろんなことを、今の会社では得ている。
興味のあることなら、もっと知りたい、頑張りたいという貪欲さも湧き上がってくる。自分で動いていかないと経験なんて積めるわけがない。

そんなわけで、今自分が手にしたいものは何か、その先に目指すものは何か、その時の仕事をしながら軌道修正していくんじゃないかと思う。
今の会社はとても気に入っているし、向こう数年はお世話になりながら全力で頑張るつもりだ。
それでも、ぼんやりと抱いている「いつかこうなりたい」は、今の仕事の延長線上にはきっとない。それがクリアになったとき、また今の仕事を手放す時が来るのかもしれない。

変わっていく自分の気持ちに嘘をつかないことが、豊かな仕事人生の秘訣なんじゃないかと思う。
「現状の延長線上に、自分の欲しい未来はない」
私の決断を後押ししてくれた言葉だ。