「付き合う」とはなんぞやと、OKをしておきながらわからない

「バレンタイン」の事を思い返して1番印象に残っているのは、やっぱり中学2年生の頃だ。

中2の7月、初めて異性と付き合う事になった。
その少し前から、どうもその子が自分の事を好いてくれている、というのを風の噂で聞いていた。というより、友達がその子に告白した時に誰が好きかを打ち明けたようで、それが自分だったというわけだ(そもそもの全校生徒が少ないのと、クラスも30人を切っていたので、そういう噂も広がるのは早い)。
上の学年の子からちょっかいを掛けられたりしながら何日か経ち、ある昼休憩の事、その子に呼ばれたのだ。
「わかるよね?」と言われて、「うん」と答えた。互いに好きです、付き合ってください、という言葉はなく、なんとなーくでお付き合いが始まった。
なんというか、ふわふわした心地だった。こうして、クラスメイトだけど他の子達とは違う関係が始まった。

「付き合う」とはなんぞやと、OKをしておきながらわからなかった。その子も多分人と付き合うのは初めてだったんじゃないかと思う。
彼氏彼女ってのは手を繋ぐだったりハグをするだったり、そういう事をする仲なのか?正解がないものを考えるのは余計に頭を混乱させた。

バレンタインが近づき、もちろん彼氏という事で準備をした

小学生の頃からクラスメイトとして同じ教室で過ごしていたその子は、自分が消極的な事もあり、あまり関わりなく過ごしてきたので、「なぜ自分のことを好きになってくれたんだろう」と思いながら過ごしていた。
たまに目が合うとドキリと心臓が跳ねて、どんな顔をしていればいいのかもわからなくて。とにかくピュアっピュアな反応をしていたように思う。

そんなこんなで家に呼んだり祭りに行ったり、本当に時々会う中で時間だけが過ぎていく。年が明け、バレンタインが近づき、もちろん彼氏という事で準備をした。そして渡しに行った。

今まで誰かにあげるチョコはすべて義理だったので、いわゆる本命は何を用意するべきなのか、はたして自分があげて喜んでくれるのかずうっと不安だった。あまりその時のことを覚えていないのは、相当に緊張していたからだと思う。
でも無事に受け取ってもらえた事だけは記憶にある。特別なものを渡したような気がして、学校で会うのが何だか気まずかった。少しすれ違うだけでも緊張した。

ホワイトデーに期待していいのか、しすぎるのも良くないのかソワソワ

……そこまでは良かったのだ。
バレンタインに強く結びついている日がある。ホワイトデーだ。

ホワイトデーは1ヶ月後。期待してもいいのか、しすぎるのも良くないのか、ソワソワソワソワしながら学校生活を送る。
学校に食べ物を持っていくのは禁止されていたので、学校では普通に過ごし、放課後はそれぞれ部活へ行く。部活が終わり、自転車置き場でその子がきた時はいつも嬉しかった。
家の方向が違うので荷物を結び終えたらばいばいなのだが、わざと結ぶのをゆっくりにしたり、今思うととても可愛らしい事をしていた。

自転車で帰ってから、家に上がると小学生の妹が何やら綺麗にラッピングされたそれを食べている。
「……ん?」
これもしかして自分宛のものじゃないのか?

嫌な予感は的中。少し泣いて、減ってしまったお返しを妹から奪った

その嫌な予感は的中した。
ポストの上に置いてるので、とその後彼氏に教えてもらい、そのラッピングされたお菓子もポストの上にあったと。そしてそれを妹が食べていると。

どこからか悲しみにも悔しさにも似た感情が湧き上がってきた。
少し泣いて、減ってしまったお返しのお菓子を妹から奪う。

今思えばそのお返しに誰からのものかは書かれておらず、気づかなかったのだろう。でも、わからないものを食べるだろうか。いやでも、妹はまだ4年生くらいだ。仕方ないといえばそうなのだが、もちろん今はそう思っているのだが、その時の自分は初めての本命のお返しを食べられてしまって、どうしようもない気持ちになった。

バレンタインは上手くいったのにホワイトデーはなかなか寂しい結果となり、未だに忘れられない。