今から4年前、高校2年生のバレンタインの話です。
私には高校時代ずっと好きだった男の子がいました。その男の子はお昼休みや放課後、非常階段でよくギターを弾いて歌っていました。同じクラスになったことはないけれど、その歌声が聴きたくて、よく放課後勉強だとか理由をつけて残っていました。
彼のことが好きだと友達に知られた日から、友達が間に入ってくれて連絡を取るようになったり、行事で写真を撮ってもらったり、どんどん彼への好きが増していきました。
見え透いた嘘と一緒に渡したチョコレートを、彼も嬉しそうに見えた
増していくばかりの好きをいつ伝えれば良いか分からず、バレンタインこそと意気込んでいました。
少し甘めのチョコレート、ラッピングは友達よりも少し豪華に、赤いリボンを付けた特別なチョコレートでした。
当日の放課後、下駄箱で見つけた彼に近づき想いを伝えようとしましたが、緊張から高鳴る心臓がそれを阻み、「いつもありがとう!友チョコだよ」なんて見え透いた嘘をついてしまいました。
きっと私の気持ちに気づいていた彼が嬉しそうに笑って、ありがとうなんて言うから、もうそれで十分だと思ってしまいました。
その後、お友達に渡せたよと報告がてらチョコレートを渡し、一緒に帰っていると、少し遠く離れた後ろの方から私の大好きな彼の笑い声が聞こえてきました。
2つのチョコレートを自転車にかけ、女の子の隣を歩いている彼がいました。見なかったふりをしようとして、もうこれ以上後ろを振り返らないようにできるだけ前を見て歩きました。
ああ、やっぱりか。翌朝、「大丈夫?」と友達に聞かれ全てを悟った
その日の夜は不安でいっぱいになり、よく彼が歌っていた曲を音楽アプリで聴きながら寝ました。翌日学校につくと、すぐ友達に「大丈夫?」と聞かれ、「ああ、やっぱりか」と全てがわかったような気がしました。
私のチョコを受け取ってくれた彼はその後、同じクラスの女の子にチョコをもらい、告白されたそうです。彼の返事はOK。
今考えると馬鹿なようですが、辛くなり、涙が止まらなくなった私はその日一日中、保健室で泣いていました。
リネンがオレンジ色を写す頃、保健室を出るとたまたま通りかかった彼が「チョコレートすっごい美味しかった!保健室にいたの?大丈夫?」と。
素直になれない私は、「彼女いる人にチョコなんて渡してごめんね」なんて意地悪を言ってしまいました。悲しそうに首を横に振る彼を見て、泣きそうになった私は走って帰りました。
それから彼と話すことはなく1年が過ぎようとしていました。
結局、バレンタインの日に付き合った女の子とは、2ヶ月程で破局、また放課後にギターと歌声が聴こえるようになり、私はどうしても彼への気持ちを消せませんでした。
この曲を聴きながら寝たあの日、もし彼に好きだと伝えていたら
高校3年生のバレンタイン、受験も近く手作りのチョコを渡すことは出来なかったので、市販のチョコの裏に“頑張ろうね!”と書いて彼に渡しました。
音楽が大好きな彼は、ホワイトデーの日に沢山のCDを貸してくれました。卒業式の日に返す約束をしていたそのCDを、私はわざと机の上に残して行きました。
大学生になり、忙しさからなかなか予定が合わず話すことも段々減ってしまい、月日は経って夏の終わり、彼がたまたま私の地元の駅に寄る用事があったので会うことに。
もう、バレンタインに渡せるほど強くない私はその日、CDを返すのが遅くなってしまったお詫びとしてチョコレートを一緒に渡しました。「ありがとう!電車ですぐに食べるわ!」なんて無邪気笑いながら手を振る彼を見て、なんだか寂しい気持ちになり、帰り道、「この曲を聴きながら寝たあの日、もし彼に好きだと伝えていたら」なんて後悔まじりの考えを浮かべながら、彼がよく弾き語っていたあの曲を口ずさみながら帰りました。