わたしだけ彼氏がいない。ガールズトークにもやもや
学生時代、わたしはバレンタインが苦手だった。
男女共学の高校に通っていたけれど男子と話すのが苦手で、彼氏はもちろん、男友達も一人もいなかった。
バレンタインは友チョコ(女友達限定)だけで十分、そう思っていた。
高校1年生の時、いつも一緒にいた女子4人のグループで、彼氏がいないのはわたしだけだった。
「ねえねえ今年のバレンタイン、なに作る?うちの彼氏、生チョコが好きって言ってた!」
「てかさ、うちらの中で彼氏いないのtataだけだよね。」
「好きな人いないの、もったいないよ!とりあえず彼氏作りなって!」
バレンタイン目前の、この会話が嫌いだった。
彼氏がいなければ楽しくないの?
恋愛していないわたしはダメなの?
とりあえず彼氏作りなよって……「彼氏」さえいれば誰でもいいの?
バレンタインの話題になると必ずもやもやした気持ちになった。
わたしのことはほっといてほしかった。
できる限り場の雰囲気を壊さないように、「わたしは友チョコだけかな~」なんて言ってその場をしのいでいた。
好きな人はできたけど。こっそり渡そうと友だちには話さなかった
1年が経ち、またやってきたバレンタインの季節。
1年前と同じメンバーで毎日を過ごしていたが、一つだけ違うことがあった。
それはわたしに好きな人ができたことだった。
「友チョコ(女友達限定)だけで十分」と思っていたわたしだったが、好きな人にチョコを渡してみたい、そんな気持ちが芽生えていた。
「今年のバレンタインはガトーショコラにしようっと!」
「うち、先月別れたばっかりだしな~」
「いい感じの先輩に渡そうと思うんだよね!」
恋多き友人たちは、1年前と変わらず楽しそうに話している。
「わたしも今年はチョコ、渡したい人がいるんだよね」
そう伝えればガールズトークが盛り上がると思ったけれど、わたしはあえてそのことを言わなかった。
もしチョコを渡せなかったら……。
わたしの好きな人が友達の元カレだったら……。
もしも恋多き友達にわたしの恋愛を馬鹿にされたら……。
チョコを渡す以前に、周りから冷やかされてしまったら……。
余計な心配をして傷つくのが怖かったから、こっそり好きな人にチョコを渡すことにした。
他人の目に縛られなくなった今、バレンタインが楽しい
バレンタイン当日、結局好きな人にチョコは渡せなかった。
渡せなかった理由は、誰かに渡すところを見られて、冷やかされるのが嫌だったから……。
好きな人に想いを伝えることよりも、誰かに冷やかされたり批判されたくない気持ちが勝っていた、わたしの学生時代。
人からどう見られているか、とか、みんなと同じじゃなきゃダメだ、とか、そんなことに縛られてばかりだったように思う。
大人になった今は友達のグループに属さなくても、不自由なことは一つもないし、わたしらしくいられてとっても気楽。
わたしが苦手だったのはバレンタインではなくて、自分らしさを抑えながら過ごしていた学生時代のわたし自身だったのかもしれない。
いまでは、周りになにを言われようと「わたしはこの人が好き」と言える夫に出会えて、一緒に普段よりちょっと良いチョコを食べることができるバレンタインが大好きだ。