高校1年生のバレンタインのおはなしです。
いつも友だちに囲まれている憧れの彼に、バレンタインを渡そうと決意
私には、片思いをしている男の子がいました。
最寄り駅が一緒で、運動がすごく得意で、背が高くて、どちらかというと静かだけどみんなから好かれてて、いつも友達に囲まれてる、憧れの人で、気がつくと目で追ってしまっていました。
けど、私はすごく人見知りで、男の子とお話することなんてほとんどなく、いつも見ているだけでした。
彼と全然仲良くなれないまま1年が終わってしまうのが悲しくて、私は彼にバレンタインにお菓子を渡そうと決めました。
彼と私はLINEで私から宿題のことを聞く程度の関係で、会話が続いた事は一度もありませんでした。それでも勇気を出して前日に、「少しでいいから明日2人で放課後会えないかな?」ってLINEしました。
そしたら、「2人は難しいかも」って。
すごく落ち込んだけど、諦めきれなくて夜中に「朝はどうかな?」って送ったら、「朝練があってすごく早い時間になっちゃうけどもしよかったら」って返事が来ました。
その日の晩は全然眠れませんでした。心臓が速くうるさく動いてて、顔が熱くて頭の中が明日のことでいっぱいです。
手作りのカップケーキと、保険で買っておいたキャンディが入った紙袋を机の上に準備して、いつもより丁寧に髪の毛をとかして「最初はなんて声を掛けようか」と考えながら目を瞑りました。
待ち合わせの時間は6時50分。「おはよう」とだけ言って渡した紙袋
次の日の朝、4時半に目が覚めて、髪に何度もアイロンを通しました。彼が、「部活の朝練があるから7時の電車に乗る」と教えてくれたので、6時50分に待ち合わせにしました。私は、家から20分の駅に向かうのに6時に家を出ました。
空はピンク色に光ってて、心臓の動きがさらに速くなりました。
駅に着いて30分くらい、彼がどこから現れるのか緊張しながら待ちました。
彼が少し恥ずかしそうにやってきて、私は「おはよう」っていって紙袋を渡しました。彼はにこにこしながら「ありがとう」って少しお辞儀して受け取ってくれました。頭の中が真っ白になって思考が停止しました。
一瞬で時間が流れて何も言えないまま、彼が電車に乗っていくのを見ていました。そしたらさっきまで固まってたのが嘘みたいに頭の中を、好きって言えなかったことや、何も話せなかったこと、いろんなことがぐるぐるとまわり始めました。
彼が乗った次の電車に乗って、友達に話を聞いてもらおうとスマホを出しました。そしたら彼から「朝早いのにありがとう。家に帰ったら食べるね」ってLINEが来ていました。
彼の方からLINEが来たことはほとんどなかったので、嬉しくて嬉しくてにやにやがとまりませんでした。
お返しをもらえたら想いを伝えようと思ったけど、届いたのは郵送で…
結局、彼にちゃんと「好き」と伝える事はできませんでした。
「もしもホワイトデーでお返しをもらえたら、そのときに言おう」って決めてたのに、コロナのせいで会うことができませんでした。
けど、お返しに彼が郵便でバームクーヘンを送ってくれました。今まで苦手だったバームクーヘンが大好物になりました。
あのとき私にもっと勇気があれば、未来は違ったのかもしれません。けど、あのときのどきどきした感覚は、とても大事な思い出です。