私は25歳の介護職員で、現在は障害者デイサービスと日雇いで色々な介護施設で勤務している。この施設では1年半、介護職として3年半、様々な施設で働いている。

介護職を3年半やっていてわかったことがある。コミュニケーションで大切な技術についてだ。
私は未経験者で介護の仕事を始めた。初めて働いたのは小規模デイサービス、一日に7、8人ほどの利用者が来所されていた。こじんまりしていて未経験者の私にはぴったりな施設だったが、管理者の女性がとても厳しかったのだ。

注意されても、話す技術に自信がある私はちゃんと聞かなかった

彼女からは介護の基礎をしっかり指導してもらった。介助技術やサービスの在り方、コミュニケーションなど。褒められる事はあまりなく、注意が多かったのだ。

「あなたのコミュニケーションは利用者をバカにしている」「利用者は人生の大先輩なのよ」などの怒号がいつも聞こえた。コミュニケーション技術について自信があった私は、彼女の指導をちゃんと聞いてなかった。
当時の私は22歳。若さと元気と孫のような可愛さがあったと思う。接客業の経験が長かったので話す技術には自信があった為、利用者とのコミュニケーションに関しては問題はなかったと思っていたのだ。

利用者が病気で不安になっていても「そんなこと大丈夫ですよ」「○○さんはいけるってば」と明るく返事をしていた。
上手く利用者の言葉に返事をするという事しか頭がなかったのだ。だから彼女の指導も聞き流していた。

私は彼女の指導の厳しさに耐えられず、10ヶ月でこの施設を退職した。そして色々な施設を転々として今の勤務スタイルになった。
介護職員としての3年半は、どこの施設でも先輩職員や利用者から色々な事を学び、成長したと思う。

返す言葉なく会話終了。コミュニケーションで大事なことを理解

先日、日雇いで行っているデイサービスでこんな事があった。
利用者は70代男性で、脳梗塞の後遺症で半身麻痺があり、この施設に5年通っているとのこと。何回か彼の入浴介助を手伝ううちに、彼から国立大学院を卒業し高校教諭をしていたということが聞けた。
私は利用者を見てそこから話を引き出し、そして広げ深めるというコミュニケーションスタイルを取っている。
彼の場合は腕の筋肉がしっかりあったので、そこから話を引き出してみた。
「腕すごくがっちりされてますね。昔何かされていましたか?」
彼は嬉しそうに答えた。
「50年ほど登山をしていたんだ。世界中の山を登ったよ」
「凄いですね。エベレストとかもですか?」
「そこはないさ。でもこんな身体になったからもう無理さ」
彼の表情は険しくなった。
「リハビリ頑張られてるじゃないですか」
「リハビリを頑張っていても治らないんだ。私が治るのは再生医療だけさ。しかし、再生医療は私が生きている間には普及はしないんだ」

返す言葉がなかった。そしてわかった。
共感と励ましだけがコミュニケーション技術ではない。コミュニケーション技術で大事なことは、利用者の話をよく聴く力、相手から話を引き出すための言葉を選ぶ力なのだと。

いつでも主役でいたかった私は、誰が主役かわかっていなかった

主役は利用者であることをわかっていなかったあの頃の私。介護ではなくプライベートでも自分は主役でいたからだ。話すだけがコミュニケーションではないと痛感した。
コミュニケーションは講座を学んだだけでは取得出来ない。たくさんの失敗と練習と自分で気付いてやっと取得出来るのだ。

私と仕事の関係は、親や先生のようなものである。
家庭で親が子どもに対して箸の持ち方やトイレの使い方を教えるように、学校で先生が教科を教えたりするように。仕事では上司や先輩が技術や仕事の流れを一から教えてくれる。そして自分は一人前になっていくのだ。
今の職場でどんな事を学べて出来るようになるのか、次行く職場で今までの経験を活かし、新たな事を吸収出来るのか。楽しみである。