特集:もし今あなたに会えたなら

ゲームの世界で出会った「何でも通じ合える」彼女は、突然消えた

もし今あなたに会えたなら

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あの子が消えた。
消えたと言っても、失踪したわけでも、生涯を終えたわけではない。生きている。
生きているけど、消えた。私の前から。

ゲームの世界でアバター同士がぶつかったのが、彼女との出会い

結婚を機に地元を離れ、見知らぬ土地で一日のほとんどを一人で過ごす私を不憫に思った地元の友人が、教えてくれたゲーム。
生粋のゲーマーである友人が太鼓判を押すほど面白いゲームのようで、そんなに言うのなら……と、インストールしてみた。
実際にプレイしてみると、鮮明なグラフィックに加え、可愛いアバター、かっこいいアバターなどが数え切れないほど存在した。
一瞬でこのゲームの世界観に惚れ込んだ私はどんどんハマっていき、夜遅くまでプレイするようになっていた。

2021年の冬。
いつも通りログインし、せっせとミッションをこなしていた時に、偶然アバター同士がぶつかって出会ったのが彼女だった。

他のプレイヤーとはフレンドにならない限りどうなることもなく、いわゆる他人に過ぎない。
たかがゲーム、とはよく言うけれど、相手も人間だ。ぶつかってしまったお詫びに、モーション機能を使って「ごめんなさい」の意を伝えた。チャットで会話をすることも可能だが、フレンドにならないとできないので、これでしか伝える術がなかった。

ぶつかっても素通りしていくプレイヤーが多い中、彼女は違った。
私が別のミッションをこなしている最中もちょこちょことついてきては、暗い道をアイテムを使って照らしてくれたり、ミッションを達成した際は、私以上に喜んでくれたりした。

フレンド申請を受け入れてくれた彼女。SNSで繋がり毎日遊ぶように

彼女の純粋な行動に心を掴まれた私は、勢いに任せて彼女にフレンド申請をした。
通常ならある程度交流を深めてからフレンドになるのだが、その時はとにかく彼女を引き留めたい一心だった。
彼女がそれを受け入れてくれてから、毎日一緒に遊ぶようになり、個人のSNSでもやりとりをするようになっていった。

彼女は私との日々のやりとりを日記に綴ったり、ゲーム内でのスクリーンショットを待ち受けにして、仕事の癒しにしてくれていることを教えてくれた。
それは、私も同じだった。日々増えていく写真は待ち受けとして何度も画面を飾り、日記には彼女と出会った時の感動や、日々の嬉々とした気持ちを綴っていた。

好きなもの、感動するもの、好きな音楽や映画。話す度に増える共通点や新たな発見は、私にとっての宝物だった。
あまりにも居心地の良いこの関係を言葉にするのなら、「ツインソウル」。互いに互いをそう当てはめて語り合った夜は、とても神秘的だった。
彼女とは何でも通じ合える。この先もずっと一緒。そう確信していたほんの数ヶ月後、彼女は消えた。

関係を全てブロックした彼女に「まだ待っているの?」と言われても

一向に返ってこないメッセージに異変を感じ、それに気がついてしまった瞬間、喉の奥が潰されていくような感覚に襲われた。
ゲームも、繋がっていたSNSも、全てブロック。なんの前触れもなく、彼女は私との繋がりを全て絶った。

スマホを机に置いた瞬間、ぐるぐると色々な感情が巡ってきた。

彼女には彼女の生活がある。何かあったのかもしれない。
そもそも私と繋がっている事が、しんどくなっていたのかもしれない。
それに私もいい歳で、夫もいて、現実に目を向けることはたくさんある。
ゲーム内の人に切られたくらいなんだっていうんだ。たかがゲームだ。

彼女が消えて数ヶ月経った今でさえそう思い込んで、以前の日常を再び取り込んで生きようとする私は滑稽だった。

彼女は私をブロックした後も、ゲームにログインし続けている。ゲームの仕様で、フレンドにブロックされていても、相手のログイン状況が分かってしまうのだ。
それもなかなか残酷だったが、心のどこかで、「また戻ってくる」という変な期待を抱いてしまっていることも事実だった。
でももう、会えないかもしれない。悲しいけれど、時間が経つにつれて、その気持ちは日に日に確信の方向へ向かっていっている。

彼女はいなくなった今も、私の中でチラついては、ひどく意地悪に形を変えて、「まだ私を待っているの?」と嘲笑してくる。
でも、もしまた会えるなら、情けないほど声を震わせて、「おかえり」と言うんだと思う。ただただその一言だけを伝えたい。

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