恋人に贈るチョコを買いにデパートに来て、大人になった気がした
大阪梅田の大きなデパートのバレンタイン特設会場。高校時代の友達と一緒に、お互いの恋人に贈るチョコレートを探す。
大学生になって初めてのバレンタイン。高校生の頃は雰囲気に圧倒されて入ることもできなかったハイブランドの香水の匂いが漂うデパート内を、「お互い大人になったねえ」なんて言いながら歩く。
キラキラした高級チョコレートを見て、胸がわくわくする。プレゼント用のチョコレートを買うなんて初めてで、大人からみたら18歳なんてまだまだ青二才なんだろうけど、大人になった気がしてなんだかそわそわした。
思えば高校生までは毎年、大量のチョコレートを手作りしていた。毎年、バレンタイン当日の授業中の女子はみんな眠そうだった。
チョコレートを溶かして型に流して固めるだけの手作りチョコレートから始まり、最後に手作りした高校二年の時はラッピングにも凝ったクランチチョコレートが作れるようになっていた。年々私の手作りスキルは上達していった気がする。
そしておそらく、初めてバレンタインを好きな人に渡したのは小学校6年生の頃だ。
幼馴染みに渡した手作りのチョコプリンは、ちっともおいしくなかった
幼馴染みで親同士もとても仲のいい、家も近い、そんな関係の男の子だった。いまいち顔が思い出せないけど、サッカーが大好きでよく足を骨折していた気がする。
当時はスマホなんて持っていなかったから、図書室で借りた料理本に書いてあったチョコレートプリンを見よう見まねで作った。それっぽく固まって、もう気分が最高潮に高まって、家があまりにも近いからラッピングとかもせず、容器に入れたまま呼び鈴を鳴らして届けに行った気がする。今考えたらあり得ない話だけれど。
とっても驚いてくれたのを覚えている。そしてとびきり喜んでくれたのも。
家に帰って自分で残りのものを食べてみて、びっくりした、固まっているようにみえたのは表面だけで、中は粉っぽくどろどろで、ちっともおいしくなかった。
なんで味見して渡さなかったんだろう……と自分の浅はかさを反省して涙が出てきた。おいしいって言ってくれてたのは100パーセント嘘だっただろうなあ……と思って悲しかった。
3月に入り、あと1か月で中学生だから、ということでスマートフォンを買ってもらった。
例の男の子と連絡先を交換した。1通目は向こうから、そういえばバレンタインおいしかったよー!という内容のメッセージだった。嬉しすぎた。
ホワイトデーにはマドレーヌをもらった。お小遣いで買ってくれたらしい。もったいなくてしばらく食べることができなかった。
たくさん経験して失敗して。これからも大切な人を想ってチョコを
同じ公立の中学校に入学して、しばらくしてから告白してもらって、無事にお付き合いができた。この人が、人生で初めてのちゃんとした彼氏だ。
中学生の付き合いだし、結局そう長くは続かなかったし特になにもしなかったけれど、廊下でみかける度にドキドキしたり、しゃべるだけで緊張したり、それは可愛らしい恋愛をしていたように思う。
あの頃から今に至るまで、たくさんの経験をした。たくさんの失敗もした。
18歳。大学1回生。大人とはいえない、でも子供ではもうない。そんなあいまいな年に出会った今、だいすきな人を思ってチョコレートを渡した。
今年は初めて買ってみたけど、手作りでも買って選ぶのでもどちらでも、その人を想う時間そのものが大切で貴重で特別な、バレンタインデーにおいて一番大切な時間なのかなと思う。
二つ上の今の恋人はきっと、私なんかよりもっとバレンタインデーにまつわる過去の思い出が酸いも甘いもあって、それを想像するとほんの少し嫉妬してしまったりもするけれど、お互い過去がなければ今はないし、今のあなたが好きだから、過去も含めて知りたいなあと思える。
人生80年とすると、あと62回、私はバレンタインデーを迎えることができる。
バレンタインデーとともにどんどん私自身も成長し、魅力的な大人になっていけますように。