電子レンジから黒い煙。張り切って作った本命チョコ

バレンタインに渡す本命チョコといえばやっぱ手作りでしょ!!
小学4年生の私は、ぶかぶかのエプロンをしめて台所に立つ。
近くのスーパーで簡単手作りキットを買ってきたから楽勝!!!頑張って最近いい感じの男の子のためにチョコレートトリュフを作るぞ〜!
まずはチョコチップを湯煎。せっかくお菓子作りをする気になったのだからと同時進行でスコーンを作る。
いつの間にか台所に入ってきて口出ししてくる母を無視しながら、一口サイズに分けたスコーンの生地をオーブン機能がついた電子レンジに入れて加熱開始。

さて、チョコレートはというと、まったく溶けてない。火を強火にしてかき混ぜる。これが溶けないと何もできないよ〜!
目が回るまでゴムべらでチョコレートをかき混ぜる。なんとか溶かしきり、カップに分けて冷蔵庫に入れた。

振り返ると、電子レンジからもくもくと黒い煙が。焦げ臭い匂いまでしている。大急ぎで電子レンジをとめる。部屋中の窓を開ける。
電子レンジの中からは真っ黒の塊が出てきた。あーあ。レシピ本には簡単に作れるって書いてあったのにな。

電子レンジ内を拭き取り、焦げ臭さもだいぶマシになってきた。家中冷え込んでいる。暖房さんにこれから頑張ってもらわなきゃ。
冷蔵庫から冷ましておいたトリュフを出して仕上げに粉をかける。見栄えが悪いものを選び味見。母は砂糖をかけたもの。私はココアパウダーをかけたものを選んだ。

ホワイトデーに添えられた手紙には「おいしい」じゃなくて

「あまっっっっっっっっ」と母。
「にがっっっっっっっっ」と私。

予備のものは作っていなかったので、仕方なく甘すぎて苦すぎるチョコレートを流行っていたキャラクターもののラッピング袋に包んで学校に持っていった。当日、彼は休み時間がくる度に私の近くに来ていた。
さては私からはもらえると確信していたな?!
全く男子とは別にバレンタインチョコとかいらないという雰囲気を出しつつも、もらえたら他の男子の前でチョコレートを投げるものなのだ。
私が彼にバレンタインにチョコレートを渡したことは、その日のうちに全校中知れ渡った。あんなにみんなには内緒ね!って言ったのに。
卒業までそのことをからかわれ続けたこちらの身にもなってほしい。

ホワイトデーにお返しを受け取った。身長がリンゴ3つ分のキャラクターのチョコレートと小さなお手紙。手紙には「このまえはおしいチョコレートありがとう」。

……ん?!待って、「おしい」?
「おいしい」じゃなくて「おしい」?!
不味かった?それとも「い」を書き忘れたとか?

チョコレートは有り難くいただいたけど、その手紙はどこかにやった。わざわざ手紙にあまり美味しくなかったこと書く?
両親はこの手紙を見せたら爆笑していた。嘘でも「おいしい」って書いてくれてよくない?美味しくなかったら「チョコレートありがとう」だけでよくない?!既製品を買うだけじゃなくて自分もチョコレートと格闘してから言ったらどうなの?!

もうあんな手紙はもらいたくないから、身内にだけあげるんだ

さて、このエッセイは今年のバレンタイン用のお菓子がオーブンで焼き終わるのを待っている時間に書いている。
まだ焦げ臭い匂いはしてこないから、大丈夫なはず!!きっと!

今年はオランジェット。レシピ検索アプリで見つけて簡単そうだから選んだ。
手作りキットを買って作っていた小学生の頃と比べたら大きな成長じゃない?!
オレンジを砂糖水で煮詰める段階で、もう母は台所に入ってきた。多分、娘が台所に立つと勝手に覗きにくるようにプログラミングされている。今年は母からうまく逃げつつ、美味しそうなお菓子が出来上がりそうだ。

もう身内の男性以外に手作りのチョコを渡さない。コロナの関係で嫌がる人がいるからという理由もあるけど、「おしいチョコレート」の手紙はもらいたくないもん。彼らはもしまずくてもちゃんと「おいしいチョコレート」と言ってくれるはず。

そういや女性が男性から手作りチョコレートをもらったって話は聞いたことない。家でお菓子作りをする男性も増えてきた。男性から女性へバレンタインにチョコレートを渡すのもいいと思う。

「おしいチョコレート」じゃなくて「頑張って作ってくれてありがとう」って書く人が増えてほしいもん。他の男性との差別化できるって男性側にもメリットがあるし! 女性はその男性が欲しいものやチョコレートをホワイトデーとか後日に渡す。そして、チョコレートが口に合わなかったら「おしいチョコレートをありがとう」と書かれた手紙を渡してもO K。
男性のみなさん、女性のみなさん、いかがでしょう?