青春と聞いて思い浮かぶのは、高校生だ。
自分の大学時代を振り返ると、青春と呼びたくなるような思い出は多くあるけど、やっぱりノーメイクでノンアルで、制服をまとった若さがまぶしい高校生にかなう青春はないと思う。部活も恋愛も、そして受験勉強も。

高校生活のラスト、大学受験はとてもきついと同時に、一緒に熱くなって勉強する仲間がいて、今でも心に残っている青春の1ページだ。
あのことを知るまでは、純粋な気持ちでそう思っていた。そしてそんな相手の知りたくなかった一面を、社会人になってまた見るなどということもつゆ知らず。

受験仲間を好きになってしまったけど、気持ちを伝えるのは今じゃない

通っていた小規模の集団塾では、受験科目ごとのクラスがあった。
複数のクラスに属していたが、私が特に楽しいと思っていたのは日本史のクラス。先生が常軌を逸した熱血家で、これまで出会ったことのない授業スタイルに圧倒された。それが、クラスメンバーのうちの私たち4人をとても駆り立てた。

男女2人ずつの4人でとても親しくなり、いつも一緒に勉強していた。授業が終わってからも1時間以上駐輪場でお喋りし、先生に注意されたことも何度もあった。これこそ青春じゃないかと、今は思う。
以下、関係をわかりやすくするために彼らをYくん、Mくん、Sちゃんと呼ぶ。

私はYくんに少し惹かれていた。受験生ながら、もっと一緒にいたいという気持ちを密かに持っていた。たまたま2人きりになれた時などは、帰る方向が違うことを心底恨んだ。
それでも、受験生だし、集中しなければいけない。どうしても行きたい大学もあったし、恋愛感情は仕方ないけどそれを伝えるのは今じゃない。
私はそう思っていたし、それは相手も同じだと勝手に思い込んでいた。

知らぬ間に付き合っていた2人に、なんか出し抜かれたような気持ち

夏休みを過ぎ、秋になった頃。私は衝撃の事実を耳にする。
YくんとSちゃんが、ある大学の文化祭に一緒に行ったのだと。しかもそれを本人たちからでなく、先生から聞いたのだ。
私とMくんは驚いた。確かに仲いいとは思っていたけどそんな感じだった?と、なんか出し抜かれたような気持ちだった。

一旦そう思ってしまうと、2人の間の空気がもう友達のそれには見えなくなってしまった、という話をいつもMくんとしていた。のちにYくんからは、そっちはそっちで仲いいから私とMくんもそういう感じだと思ってた、と聞かされた。
そういう感じってなんだ、君らがくっついたら必然的にそう見えるだろう、と思っていた。もちろんMくんとは仲良くしていたし、一緒にいてとても楽しかったけど。

2人が恋人同士であることを知るのに、そんなに時間はかからなかった。悔しいとか悲しいとかそんな感情よりも、受験生も付き合っちゃうんだなと、のんきな感想を抱いた。
負け惜しみのようだが、それまでの高校生活で3人の男子に自ら告白した私は、意思を持って行動を起こさなかっただけなのだ。ちなみにその3回の告白は、全て断られている。

それでも、やっぱり自分が思いを寄せている相手に彼女ができてしまったというのは、知りたくはなかった。受験勉強の仲間内で付き合うのであれば、バレないようにうまくやってくれと思っていた。
恋愛を諦める判断をしたのはまぎれもなく私自身だし、受験期だろうと付き合うのは本人たちの勝手なんだけど。

本命に合格した私と、第一志望に落ちた2人。私の判断は正しかった

それからも変わらず4人で仲良くしていたが、2人の空気感に入っていけないことも増えてきた。
そして受験が終わり、結果が出揃った。私とMくんは本命に受かり、あとの2人は残念ながら第一志望合格は叶わなかったようだ。
交際が原因のすべてではないと思うけど、関連づけて考えずにはいられなかった。そして、私の判断は正しかったのだとすら思ってしまった。

大学生活が始まってからも、男子2人とは何度か会う機会があった。そして、YくんからSちゃんとは高校卒業から3か月ほどで別れてしまったと聞いた。付き合った時期が悪かった、すごく好きだったしお嫁さんにしたかったと言っていた。そこまで想ってもらえたSちゃんは幸せだなと思った。

同時にこんなことも言われた。
私には今でも会えるし会いたいと思うけれど、Sちゃんにはもう会えないと言われた。それを聞いて、長期的に見たらやっぱりこれでよかったんだと改めて思わずにはいられなかった。

それから数年経ち、社会人になってから初めてYくんに会った時、私はまたも知りたくなかった事実を知った。彼はマルチ勧誘ビジネスにはまっており、講演会の誘いも受けた。
もともと情熱的というか、熱心なところがあるので悪気なく誘ってくれているのはわかる。それでも、話の多くがそれに関するものになってしまい、もうしばらく会わなくてもいいかなと思ってしまった自分もいる。

仲良くしていた相手だけにショックだったけど、人間関係の新陳代謝だと思うことにした。
先日、久しぶりにSちゃんやMくんと会っても、さすがにそのことは言えなかった。実はYくんに特別な気持ちを抱いていたことも、もちろん。