2月14日。
毎年友達や家族にチョコを作って渡す日。
可愛い友達や明るい同級生は、好きな男の子にチョコをあげていたけど、私は15年間あげたことがなかった。
同級生の男子なんて、すぐに言いふらすし、からかわれるに決まってる。
第一、今までは自分から想いを伝えるほど、渡したい人がいなかった。
バレンタインに本命チョコなんて、どこか他人事だと思っていた。
3月9日は、受験が終わった私の秘密のバレンタイン
3月9日。
もうすぐホワイトデーの今日は、私の秘密のバレンタイン。
自己推薦だった私は無事受験が終わり、あとは卒業まで思い出作りの学年行事や軽いホームルームがあるだけ。
私はチョコを作っていた。
前日は球技大会だった。
前期、ジャンケンに負けて体育委員だった私は、後期の委員決めで他の人がなりたがりませんようにと祈っていた。
同じ体育委員の男の子が好きだった。
立候補で後期も無事体育委員になれた私は、球技大会まで柄にもない体育委員を全うした。
球技大会が終わると、ふと彼との関わりがなくなってしまうことに気付いた。
高校は別の学校になる彼とは、あと数日で会えなくなる。
そう思うと居ても立っても居られなくなった。
笑顔が素敵な、物静かで真面目で誠実な彼。
本当は同じクラスになった時、一目見た時から気になっていた。
前期のジャンケンで私ともう1人に絞られた時、男子は彼だと黒板に書かれたのを見た。
彼もジャンケンで負けたようだった。
体育委員は絶対にしたくなかった。
プールの授業では前に出て体操の指揮を執らなくてはいけないし、体育祭はとても忙しい。
男女混合のプールで注目されたくないし、部活の最後の試合に向けた練習がある中、行事の運営は厳しい。
前期は特に嫌だった。
本当に嫌だった。
それなのに、私はもう1人とジャンケンをせず、その子に私がやると言ったのだ。
プールも体育祭も、球技大会も笑顔で乗り切った。
このまま卒業するのは駄目な気がした。
半ば押し付けて、恥ずかしさで早々に帰宅。帰宅後、彼からメールが
夕方に公園で約束を取り付けた私は、チョコを作り終え、友達と何時間も服を選んだ。
道中、緊張で寒さを忘れていたが、別の震えが襲ってきた。
部活の試合で最後のバッターになったときも、こんなことはなかった。
公園で待っていると、彼がやってきた。
言葉で伝えるのは難しかったので、手紙に思いをしたためた。
1年間の感謝、そして私の気持ち。
多くを望むつもりはなく、ただ知っていて欲しかったので、
「好きでした。高校でも頑張ってね」
と結んだ。
その渾身のラブレターとバレンタインチョコを、
「来てくれてありがとう、これ良かったら」
と半ば押し付けて、恥ずかしさで早々に帰宅した。
帰宅後数分、携帯がメールを受信した。
音楽と光の色だけで彼だと分かる。
まだ気持ちを終わらせなくなかった私は、なかなか読むことが出来なかった。
痺れを切らした友達が読み上げてくれた。
リビングにはおばあちゃんがいたけど、気にならなかった。
その夜、彼の着信音を、その日の日付の曲に変えた。
私と彼の一番好きな曲になった。
今でもこの曲を聴くと思い出す、忘れられないバレンタイン。