「教師」という職業に疲れも感じていた頃、コロナに…
高校時代から憧れていた「教師」という職業。私が大学卒業後、すぐにつかみ取ったこの仕事を始めて丸2年になろうとしている。
2年目になって仕事には慣れてきたものの、日々の授業や初めての担任業務などに疲れを感じていた。現実は、自分が憧れていた世界とは異なるものだと、感じることもあった。
しかし、あることがきっかけで、自分の仕事に対する気持ちが大きく変化したのだった。
ある月曜日の朝。ベッドから起き上がると、喉に痛みを感じた。体がだるいような気もする。恐る恐る体温を測ってみると、ほぼ平熱だった。
ただの風邪だよな。そう自分に言い聞かせながら職場へ向かった。
出勤してから保健室でもう一度検温をした。37度3分だった。
登校する子どもたちの列に逆らうように、校門をぬけて病院へ向かった。PCR検査を受け、翌日まで結果を待つことになった。
「陽性でした」。その言葉を聞いたとき、自分の耳を疑った。頑丈だと思っていた自分が、まさかあのウイルスに負けてしまうだなんて……。
それから10日間の自宅療養が始まった。その間、気づけばずっと仕事のことばかり考えていた。
「授業は大丈夫だろうか」
「担任がいないクラスは、一体どうなっているんだろう」
私に代わって、同僚たちが埋め合わせをしてくれていたのは分かっていたが、心の中はもやもやした気持ちでいっぱいだった。
気晴らしに撮りためた写真を見返してみると、文化祭や体育祭で撮った子どもたちの写真であふれていた。そして、楽しかった思い出がよみがえってきた。
「早く子どもたちに会いたい」
そう思ったときには、涙が止まらなくなっていた。
仕事の魅力を笑顔で熱弁。久しぶりのチャイムと生徒たちの声
療養期間中、ご縁があって何人かのフリーランスの方々とオンラインで会話する機会があった。
カメラを片手に旅をするのが好きな私にとって、彼らの生活は魅力的に思えた。好きなときに、行きたい場所に行って好きなことができる生活―常に多忙で、まとまった休みを取ることが難しい教師にとっては非現実的な話だ。
彼らは私が教師であることを知り、「教師って大変そうですよね」と口をそろえた。
それに対して私は否定しなかった。一方で、自分でも驚くほど無意識に、自分の仕事の魅力を熱く話していた。
授業のこと、学校行事のこと、清掃時間のこと……あらゆる場面での「楽しい瞬間」や「やりがいを感じるとき」について、私は笑顔で語っていた。
外出制限が解除され、久々に出勤した月曜日。なぜか少し緊張しながらホームルームへ向かうと、お調子者の男子生徒が、「あ、先生!おつとめご苦労様です!」と笑いながら言ってきた。
「出所したんじゃないし!」とツッコミながら教卓の前に立つと、何人かの女子生徒が集まってきた。この日はバレンタインデーだったため、チョコレートやお菓子を渡してくれた。そしてチャイムが鳴り、私はいつも以上に張り切って声を出した。
「おはようございます!」
そしていつも通り授業をこなし、子どもたちと教室の清掃をした。とにかく楽しかった。いつものことなのに、こんなにも楽しいと思えるのは不思議だった。
当たり前のことに感謝して。この仕事をしている自分が好きだ
この期間を通して気づいたことがいくつかある。
一つは、「当たり前のこと」が当たり前にできるのが幸せなんだ、ということ。電車に乗って職場に行くこと。授業で、大きな声で教科書を朗読すること。清掃時間で、子どもたちとくだらないことで笑い合うこと。
普段は当たり前だと思って普通にやっていたことが、約2週間できなかった。しかし今なら、そんな「当たり前のこと」に対して感謝することができる。
そしてもう一つは、「仕事をしている自分が好き」ということだ。仕事をしている間の自分を思い出してみると、いつでも生き生きしていた。少し大げさかもしれないが、他のことをしている自分よりずっと輝いている。
私はこれからも、この仕事を楽しんでいきたいと思う。笑顔を絶やさずに、大好きな子どもたちと向き合っていきたい。