気が付けば、私の彼氏はいつもスマホの中にいる。
付き合って2年と半年。一緒にいた期間は半年。残りの2年、彼はスマホの中から出てきてはくれない。

コロナが蔓延する少し前、韓国留学を終えた私は空港で彼とハグをして、「いってきます」と言って帰国した。彼はワーキングホリデーVISAで翌年の4月に日本に来る予定だった。私は、彼を日本で待つと約束した。
なんてことはない、すぐ会えるのだから。そう思っていた。

彼が来日するわずか1日前に始まった入国制限。後悔ばかりが駆け巡る

あの日から2年が経った2022年2月。今もまだ、彼は日本に来ることができていない。2年前に取得していたVISAは期限切れとなり、今はVISAすらない状態だ。2年間、一日もかかさず連絡は取り続けている。電話は可能な限り時間が合えば。それでも、さみしさは埋まらない。

日本に来るタイミングが一度もなかったわけではない。2020年の11月。ちょうどコロナが落ち着いて、GoToキャンペーンが盛り上がり始めたころ、ワーキングホリデーVISAでの入国が解除された時期があった。
彼はすぐさまVISA再発行のための手続きを取った。入国するためには自分で隔離施設を予約するなど受け入れ団体が必要で、彼はそのために前金も払っていた。
仕事を辞めて、飛行機のチケットを取った。あとは来るだけだった。彼を待っていた1年はあっという間に過ぎた。

「新型変異株の拡大により、政府は水際対策を強める方針で、外国人の新規入国を停止するとのことです」
開始日は、彼が来る予定だったわずか1日前だった。あと1日、わずか1日が私たちを引き裂いた。入国制限の始まりがほんの少し遅ければ、彼と私は出会えていたのに。なぜもっと早く来いと急かさなかったのだろう。もしあの時……後悔ばかりが駆け巡った。

「あと少し」「来月には」。そんな言葉をかけ合い、月日は過ぎる

私は彼と待ち続けた。
きっと来月になれば、緊急事態宣言は解除される。そうすれば、水際対策も緩和されるんじゃないか。
蔓延防止措置が解除になった!すぐに入国制限も解かれるはずだ。
「あと少し」「来月にはきっと」「もう少しだけ頑張ろう」
そんな言葉を掛け合いながら、1年という月日が過ぎた。

「ボク、鬱かもしれない」
彼から電話でそう告げられたのもその頃だった。入国のチャンスを失ってから1年が経った頃。次こそはもう機会を逃すまいと、彼は職につかずに、ただひたすら入国できる日を待っている最中だった。
「最近、ずっと憂鬱な気分で、よく吐いちゃうんだ。すぐ気持ち悪くなって。それにずっと無気力で……。日本に行くために貯めてたお金も半分になっちゃった」
彼は泣いていた。そして私も。

どうして一緒にいることを許してはくれないのだろう。辛いとき、悲しいとき、隣にいてほしい人はいなかった。それでも頑張って前を向いてここまで来たのに、どうして今、心まで病んでしまった彼を、この手で包み込んであげることすらできないのだろう。

私の彼氏は今も四角い箱の中で、日本に迎え入れられるのを待っている

私の彼氏は今もスマホの中にいる。無機質で少しひんやりとした四角い箱の中で、日本が彼を迎え入れるのを待っている。彼は言う。
「もし日本に行けたら、最初の日は、一日中ずっとくっついて、家から出ないで、ふたりでゴロゴロしていたいな」

その時が来たら、私が、もしあなたに会えたなら、「おかえり、遅かったね」と言って、思いっきりぎゅっとしてあげたいな。それから、あなたから憂鬱な気分がなくなるまで、何度も言ってあげる。「よく頑張ったね」って。
無気力になんてなれないくらい、楽しいことを準備しておくから、お金がなくても一緒に家でゴロゴロしていれば幸せだから、だから、早くあなたに会いたいな。今はただそれだけ。