約1年前、「私が働く理由」というテーマで書いたエッセイをかがみよかがみさんに掲載していただいた。
そのエッセイでは、片思いしている同期くんに見合う人になるため、自分の苦手を克服するためにアルバイトをした出来事をつづった。
「自分にできることを探してやればいい」
カウンセラーさんに言われたこの言葉を自分事として落とし込めるようになるまで、同期くんのような人を目指していくという結論が出た。
あれから1年が経過し、当時言われた言葉を自分事として落とし込めるようになってきている。
ここでは、1年前の私と今の私の仕事観の変化について書いていきたい。
病みそうになった接客のバイト。私でもできる仕事を模索する日々
例のエッセイを書いていた当時、私は事務の短期バイトをしていた。
というのも、以前クビになったバイト先の店長から「夏橙さんは事務とか裏方の仕事のほうが合っているよ」と言われたからだ。私自身、接客や表に出る仕事よりも1人で完結するような裏方の仕事のほうが性に合っている自覚はあった。実際働いてみても、事務のバイトは私に合っていたように思う。
そのバイトでは一部接客もあったが、初対面でタメ口のお客さんや怒ったような口調で話すお客さんがいて、数日間の接客とはいえ病みそうになった。ネガティブ思考の私は、そういった対応をされるだけで自分が悪いと思ってしまうため接客には向いていないと、いっそう自覚した。
そのときの経験もあってか、もう接客を選ぶことはないだろうと漠然と思った。
事務バイトが終了した4月頭、就活を既に終えていた私は次にするバイト先を探していた。
長期のバイトをせず、単発のバイトだけでやっていこうとは思ったが、プログラミングを学ぶために30万ほど使ってしまったため、確実にシフトが入るバイトを探す必要があった。
単位の取り残しもあったため、大学に通いながら、そして自分でもできそうなバイトをふるいにかけていく。そうして見つけたのが花屋のバイトだ。
苦手な接客はやらないと思っていたのに。私は結局、接客の仕事を選んだ
求人に書かれた仕事内容を見ると「接客」の文字がない。花のメンテナンスに関わる事項だけが並んでいる上に時給は高く、シフトの融通は利きそうだった。
すぐに電話をして履歴書を送付し、面接にこぎつけた。
しかし、いざ面接をすると、仕事内容に接客があることを伝えられた。
生花の販売をしているのだから当然ではあるが、あれだけやるまいと決めていた接客をまたやることになるのかと思うと胃が痛くなりそうだった。
「接客あるけど、できますか?」
私の第一印象から判断して採用するか決めかねているのだろう。店長はそう聞いてきた。
1ヶ月前まで就活をしていた私は反射的にこう答えてしまった。
「はい、頑張ります」と。
数日後、電話がかかってきた。結果は採用。予想外だった。
面接の様子から、私は絶対に受からないと思っていた。接客に関することを何度も聞かれ、私を雇うにはそれだけ不安要素があるのだろうと感じていたからだ。
思いがけない採用に不安を覚えつつ、私はまた接客バイトをすることになった。
得意分野を褒められて、接客が苦手な「私でもいいのだ」と思えた
花屋のバイトは予想以上に重労働だった。仕事の大変さでいえば過去一。
レジの仕事も初めてのため、ボタンを間違えてしまったり、決済方法を間違えたりしてミスの修正が大変だった。商品を丁寧に扱いつつ早く作業をしなければならなかったり、お客さんが並ぶほどいるときは私のほうが焦ってしまったりしていた。そもそも、商品案内以外の接客経験がなかったため、テンプレートな接客の言葉すら声に出せなかった。
「ありがとうございます」「大変失礼いたしました」すらも、教えられて初めて口に出せる。そんなありさまだった。
しかし、試用期間の3カ月が過ぎるころには、そんなテンプレの接客もできるようになっていた。
しかも、私の事務経験を買ってのことなのか、事務仕事を任されるようにもなった。
クビになったバイト先でも事務仕事を任されたことはあったが、あの時は「接客はもう任せられない」と言われているような感じがした。今回は接客から遠ざけられることはなく、接客をしながらの事務作業だったため、私でもいいのだと、認められたような気がした。
それからも事務作業やofficeのソフトを使った作業を任せてもらう機会が増え、そのたびに褒めてもらうようになり、少しずつ自己肯定感が上がっていくのを感じた。
ここで1年前のエッセイに話を戻す。
カウンセラーさんに言われた、「自分にできることを探してやればいい」というのは、花屋のバイトで私が経験したことそのものなのではないだろうか。
苦手なことに挑戦しながらも自分が得意なものを活かして働くこと。それが私に合っているのではないかと思う。