あの時信号にひっかからなければ、おじいちゃんに会えたかもしれない

高校3年生の夏休み、夜中に家族と呼び出されて行った病院で告げられた。
「呼吸停止です」
その言葉の意味が、子供の私にはすぐに理解出来なかった。
目の前で眠るように目を瞑っているおじいちゃんが亡くなったわけがない。これはただ眠っているだけ
でもなんで周りの家族は泣いているのだろう
私だけ現実を受け入れることができてなかったみたい。
お医者さん曰く私達が病院につく1〜2分前に息を引き取ったと言う。
病院に呼ばれたのは夜中で車がすいていた
急いで運転しているにもかかわらずなぜか信号の変わりがはやく感じていた
信号にばかりひっかかってしまう
あの時信号にひっかからなければ会えたかもしれない
そう到着した先の病院で泣きながら悔やむ運転手の母と私は同じことを思っていた。
初めて体験する不思議な現象にでくわした。

病院の外に出ると、記憶に残るほどの豪雨が私に降りかかった

18歳いちばん楽しい時期で、バイトと友達ばかり優先していた私
どんなに時間があっても家族との時間大事に出来なかった。
出来なかったんじゃなくてしなかったのだと思う。
幼い頃から家族は常に私の1番近い存在に在った
近すぎて当たり前になりすぎていた。
当たり前なんかじゃなかったのに…
おじいちゃんだってこんなにはやく逝くなんて思わないから久しぶり病院にいけばまた「おー！来たか！」と言ってもらえると思っていた
私の考えが甘すぎた…
もう少し何かしてあげれることがあったんじゃないかもう少し話すことができたんじゃないか当時の私には後悔だけが残っていた。
止まらない涙を堪えながら私はひとりになりたくて病院の外に出た。
あの日は真夏で日差しを直視できないほどに眩しく晴れていて病院に急ぐ道中も蒸し暑い夏の夜だった。
おじいちゃんが亡くなった直後から外はなぜか雨音がちらほらときこえていた。
天気予報に雨の予報は一切ない。
だけど記憶に残るほどの夏の豪雨だった。
一粒一粒が大粒で滝のように私の上に降りかかる。
不思議だった。あの時あの日の雨をこの先何年経っても忘れられなくなった。
次の朝、目を覚ますとあの雨はなかったことのように空が晴れていて私だけに太陽の陽があたっているように感じるほどの天気になっていた。

きっとあの日の信号もあの大雨も、全部おじいちゃんの仕業

命日が近づくたび私はあの日の不思議な体験を思い出す。
でもきっとあの日の信号もあの大雨も全部おじいちゃんの仕業だ。
私はそうなんとなく気づいていた。
きっと強がりなおじいちゃんだから弱い姿は誰にも見せたくなかったんだよね。
だから誰にも会わず一人で逝っちゃったんだよね。
病院に着くのをわざと遅らせたんだよね。
あの雨、泣いていたのも
私は全部気づいたよ。
私はあの日何も出来なかった自分に後悔をしたけれどどんな状況でも私は死を受けいれられず後悔を探していたとおもう。
もし、また天国のおじいちゃんにあえたら私は何を話すだろう。どう思うだろう。
今の私をみてどう思われるだろう。
長い長い私たちが知らない街へ旅に出たおじいちゃん。
あの日以来会えなくなってしまったけど
旅に疲れた時はいつでも帰ってきてね。
また家族で食卓を囲もう。