突然ですが、聞いてください。
私は、今から10年以上前の中学生の時に、クラスメイトからいじめられていました。それがきっかけで常に他人とは距離をとるようにしていて、高校へ入学しても出来るだけ目立たぬよう、波風を立てずに過ごそうと考えていました。
しかし、そんな私を変えてくれたのが高校時代に出会った1人の先生です。きっと一生忘れられない。そして伝えきれなかった感謝の気持ちがあります。これは、そんな思い出の話です。

私に「男子バスケ部のマネージャーにならないか」と誘ってきた先生

私が通っていた学校では、どの生徒も部活動に入る必要がありました。私はいわゆる文化部に入部し、当初の計画通りに出来るだけ「目立たない学校生活」を送っていました。
高校1年生の時、私は友人の付き添いで、男子バスケットボール部の活動を見に行くことになりました。生徒に交じって楽しそうに動き回っている先生と、体育館のフェンス越しに目が合った瞬間は、今でも容易に目に浮かびます。きっかけは確か友人の気になる人が部内にいたとかで、その後も何度か活動を見に行くことが続きました。

そんなある日、いつものように体育館へ向かう私たちに先生から耳を疑うような誘いがありました。それこそが、私の人生を変えた「男子バスケ部のマネージャーにならないか」というものでした。
ただでさえ根暗で人見知りで陰気な性格の私が、他人と関わるなんて。ましてや運動部で、しかも男子のマネージャーなんて、私が求めていた「目立たない学校生活」とは正反対の世界です。
私がそんなことをやるなんてあり得ない。そう思っていたのに、次の返事で私はその誘いを受け入れてしまいました。
なぜなら、先生からの誘いというのは、3年間いじめられて自尊心も自己肯定感も地に落ちていた私を認めてくれたように感じて、初めて必要とされたと思えたからです。

悩んでいる私を助けてくれた大人は、後にも先にも「先生」だけ

とはいえ、私は既に「目立たない学校生活」のために入部している部活動がありました。夏休みを目前に控えた時期では、そう簡単に転部することはできません。
高校では、部活動評価というものが成績に反映されるのですが、所属していた部活の顧問には「転部するなら評価を下げる」と言われてしまいました。せっかく必要とされたのに諦めなくてはいけないのか、と酷く落ち込む私に先生は「俺に任せろ」と。
そして次の日、部活の顧問から呼び出され、条件付きでの転部を許可されました。あんなに頑なだった顧問を、先生が説得して下さったのです。

いじめられていた時は、クラスメイトだけでなく担任も、私を助けてはくれませんでした。きっと気付いていたのに見て見ぬふりをされていたため、教師なんてそんなもんだ、大人はずるいと思っていたのに。
先生は違いました。悩んでいる私を助けてくれた大人は、後にも先にも、先生しかいませんでした。

他人のことが嫌いだった私が、信じて好きになれたのは先生のおかげ

こうしてマネージャーとして活動するようになり、青春の全てを部活に、先生に捧げたと言っても過言ではありません。
無意識に心を閉ざしていたのか自然に笑えていなかった私に「ロボットなの?」と直球でぶつけてきたり、私の気持ちに気づいているにも関わらず、笑いながら「彼女いないんだよね〜」と、言ったくせにあっさり結婚してしまったり、卒業アルバムのメッセージには「愛を込めて」なんて書かれちゃったりして。
他人のことが嫌いになった私が、たった3年間だけど他人を信じて、好きになれたのは先生のおかげでした。

卒業して、もう9年程経ちますが、あの日部活動を見にいかなければ。誘いに乗り、あり得ない決断をしなければ。きっと今の私はここにいません。ずっと、ロボットのままだったと思います。
ずっと言えなかった言葉。もしまた会えたら、言いたい言葉。
先生、ありがとう。大好きでした。