学生や先生で溢れかえる大学も、テスト期間が終わればパッタリ

大きいお城の小さな部屋で、ゆっくりくつろいで過ごすお姫様。私の幼い頃からの憧れである。中流家庭育ちの私には手が届かない経験だと思っていた。
しかし、今、そのお姫様ごっこが擬似的に体験できてしまっている状況にある。場所は、春休みに入った大学院の研究室だ。

私の通う大学院は大学や大学院の他、庭や木々があり、とても広々とした空間を持っている。授業がある日は教室や廊下、食堂、購買などあらゆる場所で学生や先生方が溢れかえっている。
しかし、テスト期間の終了を境目に、一気に学生も先生方もいなくなる。まるで神隠しにあったようにパッタリとだ。そして、昼の学校は少し不気味な程度だが、夜の学校は更に不気味さが増している。まるで廃墟のような感覚があり、幽霊が出てきてもおかしくない(幸か不幸か見たことはないが)。

しかし、私はよく人酔いをしてしまうため、人混みが苦手である。そのため、むしろ人気のない大学院の方が好きなのだ。そして現在、春休みに入った大学院を独り占めして満喫している。

研究室に向かう私は、さながら大広間を通るお姫様。でも部屋に入ると

春休みの大学院は基本的に人気がない。特に休日の大学院は全く人気がない。周りを見渡しても誰もいないのだ。大学院どころか、庭や大学、周りの施設にも全く人気がない。
私は周りを見渡して誰もいないことに気づくと、ウキウキしてくる。物語で見た大きくて広いお城を独り占めしているようだからだ。

私は、その後いつものように鍵を開けて大学院に入り、研究室へ向かう。広い庭から大きなお城へ入っていく。さながら、物語に出てくるお姫様が大広間から自室に向かうかのように、しずしずと気取って向かってみるのだ。

しかし、研究室に入った途端、お姫様ごっこは終了していつもの一般大学院生に戻ってしまう。なぜなら、研究室にはテレビ、パソコン、冷蔵庫、電子レンジ、ソファなど様々な便利グッズが揃っており、ダラけることは避けられないのだ。

私は、研究室を独り占めしていることをいいことに贅沢をしている。
それは、テレビで好きなドラマを鑑賞したり、映画見放題のアプリを繋げておひとり様の映画鑑賞会を開いたりすることだ。私が番組や映画を選び自分だけのチャンネルを作るのだ。ソファに座りスタンバイ。冷蔵庫で冷やしたコンビニスイーツがお供である。

研究室を独り占めして満喫。お姫様はお城の部屋で何をしていたのだろう

そして、大好きな俳優さんがときめく演技をすれば、つい感嘆の独り言が出てしまう。俳優さんの格好良いシーンは、つい動画を止めて繰り返し見て格好良さを堪能する。あまりにも格好良すぎてどうしようもないシーンが出てきた場合、照れちゃうので顔を抑えて手足をバタバタさせてしまう。
絶対に他の人には見られなくない恥ずかしい場面だ。でも誰も知らないし、気づかない。大学院には私1人だけなのだから。

これではたとえ大きなお城の小さな部屋で過ごしていても、ただの一般大学院生と変わらない。しかし、この過ごし方は一般大学院生だけなのだろうか。

そういえば私が憧れていた、大きなお城の小さな部屋のお姫様のお部屋の内部を見たことはなかった。お姫様が部屋の中で何をしていたかも私は知らない。
案外、お姫様も私のように美味しいものを食べて、ふかふかの椅子でくつろぎ、素敵な人にときめく一般大学院生と変わらない存在なのかもしれない。
そのような事を言ってしまうと、夢を壊す発言ともとらえかねないため、思いついても1人で心にしまってしまうのだ。