子供の頃に観た眠り姫は呪いをかけられて、長い眠りについても、格好よくて、勇気のある強い王子様の愛のキスで呪いは解けて、結婚して、めでたしめでたしだった。
シンデレラは継母や姉にいじめられて、辛いことがあってもくじけず、常に最善を尽くし、最後はガラスの靴と自分の力で国の優しい王子様と結婚してめでたしめでたしだった。
白雪姫もいつか王子様が現れると歌を歌い、その通りになった。
子供の頃の私はそれらのプリンセスストーリーがとても好きで、何度も観たいと親にねだり、歌を歌い、私だけの王子様が現れることを期待して大人になるのが楽しみだった。
子どもの頃憧れた王子様はフェアリーテイルの存在。現実にはいない
ところが、大人になるにつれて王子様はフェアリーテイルの存在なのだと知った。
格好良くてチャーミングで、知性に溢れて話もおもしろくて、勇敢で男気のある人は実存しないことをまざまざと思い知らされた。
自分だけの王子様(彼氏なのか旦那さんなのかはおいておいて)がいればまだいい方で、そもそも王子様キャラもそうそういなければ、リアルの王子様はテレビの向こうの世界のお方で私の手が届く人ではない。
おとぎ話は現実に起こらないからいいのだという事実がとても悲しかった。知りたくなかった真実だった。
高校生の頃には、同年代の男子と付き合うとか付き合わないとかそういうのがとても流行っていたけれど、おとぎ話の王子様がこんなバカで下品でうるさいクラスメートなはずがないと、私は彼らを毛嫌いしていた。というわけで、誰と付き合うこともなく私の青春は過ぎた。
一目ぼれした王子様のような彼は、付き合って3ヶ月で豹変した
それから4年後に、私はある人に一目惚れをした。大学の先輩で、優しい声に優しい笑顔で知性があり会話が楽しく、何より格好良かった。知れば知るほど彼に惹かれ、彼との関係もトントン拍子に進み、私達は付き合うことになった。
彼はまさに王子様で、道を歩くときは私を歩道側にしてくれて、いつも会うと「リラルリ、今日も可愛いね」と言ってくれた。車を持っていたから、私がどこかへ一人で出かけるときにも送ってくれて、一緒に出かけるときはさり気なくエスコートをしてくれた。
やはり、私だけの王子様はいるのだと思えた。私達はいつも一緒で、どこへ行っても何をしても楽しかった、付き合い始めてから3ヶ月までは。
いつの頃からか、私だけの王子様は私にひどい束縛をするようになった。
毎日一緒に居たがり、それを拒むととたんに不機嫌になった。何より、彼は性欲が強かった。私は彼とのそれが苦手だった。彼と夜をベッドの上で過ごすのが、何よりも嫌だった。そのうち、私は王子様を探すことをやめた。
おとぎ話を子供に見せるときは、注釈がいる気がする
おとぎ話には結婚してめでたしめでたしで、その先はない。そして、結婚するまでの話もガール・ミーツ・ボーイで、まあキスくらいはしてもその先のことはせず、その先に何があるのかも描かれていない。
けれど、結婚生活はそれ以外のことしかないし、描かれていないことが知りたい。私たちは王子様と出会えることはまずありえない。
仮に出会えたとしても、その王子様は私にとって完璧なわけはない、誰しも美点と欠点があるのだから。どんなに格好良くても、どんなに優しくても、どんなに知性があっても、価値観の違いや、性欲の違いもある。結婚してからも浮気するかもしれないし、不倫されるかもしれない。まさに感動的な映画のような人生を生きていけることなんて奇跡だと思う。
一生添い遂げる相手に出会えることは宇宙の彼方に行くよりずっと難しいと思う。おとぎ話を子供に見せるときは注釈がいる気がする。あなたの物語は決してこうとは限りませんと。
それにしてもおとぎ話に憧れを持たせて、でも現実は違いますよなんて、そんな真実、ホント知りたくなかったな。