27歳2ヶ月。
結婚シーズンなだけあって、SNSを開けばさかんに現れる友人たちの華やかなパーティと純白のドレス。
「あーあの子、結婚したんだ」
あの頃のあの子とは見違えて、どこかのモデルさんみたいに艶っぽく色っぽく美しくなったあの子が、優しそうな旦那さんと笑顔に包まれている。そんなSNSの投稿が目に入る度に、「私は彼といつ結婚できるんだろう」、「いつになれば純白のドレスが着せてもらえるの?」なんて、心の隅っこでぶつくさつぶやいていた。

昔はこんなに焦っていなかった。そのはずだったのだけれど、素敵なお姫様になって決してカッコよくはないけど優しそうな王子様と一緒にお城に住みはじめたあの子達を、気づいたらどこかでうらやましいと思って夢みていたのだろう。いつまでたっても現れない王子様に、気づいたら待ちくたびれてしまっていた。

SNSを閉じてネットサーフィンし始めた私に、純白ドレスの閲覧履歴を察したcookieが、ご丁寧にも純白ドレスのみならずカラードレスをも見せつけてくる。

かつて結婚を求めたように、子供を求めるのだろう

28歳7ヶ月。かつて焦っていた私も、結婚した。暇つぶしがてら出会い系アプリに登録して右にスワイプしたら彼がいた。コロナの時代になっていたから、あの子みたいな素敵な純白のドレスは着られなかったけど、だれもが羨むカッコいい優しい王子様が迎えにきてくれた。大好きな彼と結婚。本当に幸せ。・・・

28歳11ヶ月。ふと開いたストーリーでおちびちゃん達が無邪気な声をあげている。
「あーあの子、二人目か」
いつの間にかママになったあの子が、少し横に大きくなった旦那さんと、旦那さんにそっくりな目をした子供達と笑顔に包まれている。

そんなSNSの投稿が目に入る度に、「いつか仕事が落ち着いたら子供ほしいな」「どんな名前つけよう」なんてわくわくしている。
これが焦りに変わった時、わたしはかつて結婚を求めたように、子供を求めるのだろう。

結婚は、人が生きて死ぬまでのライフイベント一つでしかなかった

つまるところ、結婚も出産も、無意識に追いかけてしまっているあの子がいて、あの子より輝ける私を追い求めているだけだ。
いまは結婚とか出産とか華やかなことを夢見るけど、そのうち死に様や死後の見送られ方まで夢見出すかもしれない。
いつかおばあさんになった私は、死んだあの子のお葬式を見て「ああやって自分の好きな紫の色に包まれて見送られたいな」なんて思うのだろう。そう考えれば葬式屋のコマーシャルメッセージもまんざらでもないようだ。

結婚は、人が生きて死ぬまでのライフイベント一つでしかなかった。手にいれてみれば、次に欲しいものができるだけだ。
かつて「振袖」をまとって結婚を夢みた私は、今「純白ドレス」を身につけている。
さて、次はなにが欲しい?