予定を入れないと不安。そんな私が挑戦した予定を決めない北海道旅行

ひとり映画、ひとり焼肉、ひとりカラオケ……世の中には多くの「ひとり○○」が存在する。社会人になって、いくつもの「ひとり○○」を経験してきた。その中で、私が一番感動した体験がある。それがひとり旅行だ。

私は何事も、事前に計画を立てるタイプの人間だと自覚している。旅行だけでなく、日常生活でも手帳の予定表欄に空白があると、何かしら予定を入れたくなってしまう。何となく何もない日が不安なのだ。
だから、今回のひとり旅行はわざと何も予定を決めないことにした。最低限、飛行機の往復と宿だけ確保し、ドキドキしながら出発当日を迎えた。

旅の目的地は北海道。家族で数回訪れたことがあったが、電車で巡るのは初めてだ。
初めて乗る北海道の電車。たまたま乗車した電車の終点が小樽である事を知り、足を伸ばしてみることにした。
小樽までどのくらい時間がかかるのかも、電車代がいくらかかるのかも把握していなかった。本当は札幌のホテルに荷物を預けて、その後ホテルの人に良いスポットを聞こうかな、とか現実的なことを考えていたが、直感的にそこに行きたいと思ってしまったからしょうがない。大きな旅行鞄と一緒に小樽を歩くことになった。

小樽で運命の出合い。昔、壊してしまった祖父のオルゴール

小樽では、案内板とにらめっこしながら代表的な観光地を回った。小樽運河やメルヘン通り、有名なお菓子屋さんの本店にも立ち寄った。ただ、何かが引っかかっていた。なぜ私は小樽に行きたいと思ったのか。ただの直感だけではないような気がしていたのだ。
その謎が解けたのは、とあるお店の中だった。
そのお店はオルゴールを販売しており、店内には素敵な音色と共に、数多くの種類が陳列されていた。そのうちの一つ、店内の奥に置いてあったピアノ型オルゴールの音色を聞いた瞬間、目頭が熱くなった。それは亡くなった祖父が大事にしていた、オルゴールと全く同じ物だった。

音楽を聴く習慣がなかった祖父だが、なぜかそのオルゴールだけは大事にしており、誰にも触らせず自室の棚に飾ってあった。そんなオルゴールを、私が壊してしまった。漫画のような話だが、こっそり触っていたら落として割ってしまったのだ。あの時の祖父の落ち込んだ顔は、今でも忘れられない。
そのオルゴールと同じものが目の前にある。正直、信じられなかった。その時、私はここに呼ばれていたのかなと本気で思った。その後、即決で購入した事は言うまでもないだろう。

あとで調べたところ、小樽はオルゴールで有名な街だったそうだ。小樽のことを調べずに訪れてしまったせいで、見逃した場所もたくさんあったと思う。けれど、それ以上に大切なものと出会う事が出来た。

ひとり旅行は、心に抱えた荷物を軽くしてくれる最大級の贅沢

ひとり旅行をしたからといって、今回のようにドラマみたいな展開が訪れるわけではないと思う。けれど、ひとりでなければ直前で行き先を変えることもなかったし、想い出にゆっくり浸ることも出来なかった。ひとりで旅行して少し分かった事がある。人は誰しも多かれ少なかれ、心に抱えた荷物がある。それは誰かに押し付ける事は出来ない。普段の生活では見ないようにしていた荷物も、ひとりで行動することで改めて見つめ直す事ができる、と。私は今回の出来事で、長年抱えていた心の荷物が少しだけ軽くなった。自己満足かもしれないけれど、それでも今できるおじいちゃん孝行はこれしかないから。

学生の頃まで、旅行は誰かと一緒に行った方が絶対楽しいと思っていた。移動時間も色々話せるし、同じ想い出を共有する事で今まで以上に仲良くなれる。そして何より、一人で行動する事が寂しそうにみえた。女性誌で「ひとり旅行」が特集されているのを発見し、そんなに人気なのかと驚いたことを覚えている。
けれど、今なら全力でおすすめ出来る。ひとりでいる事は決して寂しいのではない。自分自身の貴重な時間をひとりで満喫出来る、つまりひとり旅行こそ、最大級の贅沢なのだ。