今、何か1つ願いを叶えてあげると言われたら、「妹に会いたい」と答える。
約束をしていたディズニーに連れて行って、好きなポップコーンを買ってあげる。きっと弱いお酒を2人で飲んで、美味しくないねとか言っておつまみを食べたい。小さい時から、両親に「初日の出にお願い事をすると叶う」と教えられてきた私たち恒例の「願掛け初日の出」も寒いねって言いながらやろうよ。
そして、成人式の袴に映えるような可愛い髪飾りを買ってあげたい。
でも、私の願いはもう叶わない。

あなたがお星様になった翌日、新店のオープンに立ち会った

私があなたの成人式のお祝いに買ったのは、髪飾りに負けないくらい綺麗な綺麗な写真立てだった。涙が止まらなくて、なかなかレジに持っていけなかった。
ディズニーをバックに微笑んでるあなたは、綺麗な写真立てに収まって、私も小さい時から知っている幼馴染たちと成人式に出た。
送られてきた写真を見て、なんであなたはいないんだろう?と苦しくて仕方なくて、あの写真はまだ見れそうにない。

あなたがお星様になる前、実家に帰ると「喋りすぎ」と鬱陶しがられるくらい、話しかけ続けた。東京がどんなところか、休みは何をして遊んでいるか、会社で怒られちゃったことなんて都合よく忘れて話しかけた。うるさいなあ、なんて言いながら笑って聞いてくれてた。

あなたが亡くなった次の日、私は東京に戻って初めて持たせて貰った新店のオープンに立ち会った。誰にも何も言わず、「オープンおめでとう」のご挨拶に「ありがとうございます」と綺麗な笑顔を返し続けた。
ママが見つけたあなたのスマホケースに私の名刺が挟んであった。初めての名刺が嬉しくて、何気なく渡したのをずっと持っててくれたんだね。あなたの部活の監督からは、「お姉ちゃんかっこいい、自慢の姉なんだ」といつも言ってたと式の途中に聞いた。
何だよ、直接言って欲しかったじゃん。
亡くなった翌日まで仕事したのは、何も受け入れたくなかったから、逃げたかったから。
そして、あなたが、かっこいいと言ってくれた仕事を全うしたかったから。
泣き続けるんじゃなくて、かっこいいお姉ちゃんでいたかったから。

「兄弟がいない」と答えるのは、忘れたいのでも、なかったことにしたいからでもない

あのね、一つだけ謝らなきゃいけないことがある。何気ない「ご兄弟はいるの?」っていう質問に私は「いないんです」と答えるようになってしまった。
どうしても、わたしの口から亡くなってしまったと伝えることが苦しくて、聞いてきた人たちの「ごめんなさいね」って言葉が悲しくて、私は本当に弱虫みたい。逃げてばっかりだ。
でもね、あなたをいなかったことにしてるんじゃなくて、忘れたいわけでもなくて、もう少しだけリハビリさせて欲しい。いつか、全部を消化したら「妹がいます。すごくかわいいんですよ」とちゃんと答えるから。
人がまず最初に忘れてしまうのは、声(音)らしい。絶対に忘れたくないから、あなたが話してる動画をよく見るよ。

もしもまた会えたなら、「お姉ちゃんかっこいい」と言ってくれますか?

あれから5年が経った。あなたがお星様になった翌日にオープンしたお店は、今では誰もが知る立派なお店になった。
次、あなたに会ったら、「お姉ちゃん、かっこいい」って直接言って欲しい。そして、たった1人の姉として、「この世界は思った程悪くなかった」と伝えたい。
だから、君に会ったときに「しゃべりすぎ」って言って貰えるように、一つでも大切な思い出を増やせるように生きていくよ。きっとその頃私はシワシワおばあちゃんで、あなたは19歳のままだけど、老けたねなんて言わないでよ?
でも、暫くは初日の出に「君に会えますように」とお願いさせて。