高校時代からの親友。私たち3人の関係は変わらないと信じていた

私には高校時代からの親友が2人いる。いや、正確には“いた”。
その親友のうちの1人とは、最後に連絡を取り合ってからもう3年以上が経つ。
もしかしたら、これからもお互いに連絡を取ることはきっとないのかもしれない。

私たち3人の出会いは、約10年前の高校時代に遡る。
同じ部活に所属していた私と、スミちゃんと、ゆみちゃん。それまでは同じ部活のメンバーとして活動していたけど、高校2年時の春合宿で3人とも大会メンバーに選抜されなかった悔しさからか、「下剋上するぞー!!!」を合言葉に急速に距離が縮まり、仲良くなった。

クラスも、性格も、趣味もみんなバラバラだったけど、なぜか笑いのツボだけは一緒で。
部活の後は3人でマックに寄り道したり、休みの日は映画を見に行ったりした。プリクラも数えきれないくらいたくさん撮って、お揃いのキーホルダーもチェーンが切れて使い物にならないけど、私の大切な宝物。一緒にいるだけで、何でもないことが面白くて、楽しくて、3人でお腹が痛くなるくらいひたすら笑ってた気がする。

高校3年生になり、親友の1人であるスミちゃんが学校を休みがちになってしまった。
「部活には行きたい。だけど、クラスには行けない」というスミちゃん。出席日数が少なすぎて卒業が危うくなり、私とゆみちゃんはスミちゃんのクラスの担任と部活の顧問に、どうにか一緒に卒業できる方法はないかと何度もかけあった。
当時、高校生の私たちにできることはスミちゃんの話を聞いて、少しでも登校してくれるよう祈るしかなかった。東奔西走したけど、結局3人揃って卒業することはできなかった。
「頑張ったけど、どうしても無理だったの。2人ともいっぱい色々してくれたのにごめんね」と謝るスミちゃんと、非力な自分たちのふがいなさに悲しくて3人でたくさん泣いた。

春からスミちゃんは予備校、ゆみちゃんは専門学校、私は短大と別々の進路に進んだ。
スミちゃんも高卒認定試験を受けて県外の大学に進学し、スミちゃんの自宅にお泊りしたり、居酒屋に行ったり、高校を卒業し、大人になっても私たちの関係は全く変わらなかった。

「もし3人とも結婚して子供が生まれたら、子供たちも一緒に遊ばせたいね」
「おばあちゃんになっても、きっと3人とも変わらない気がする~(笑)」
これからの未来をしゃべって、またどこかが誰かの笑いのツボに入って、けらけら笑う。
この先も、私たち3人の関係性は変わらないと思っていた。

私の中でぷつりと何かが切れる。親友に連絡することができなくなった

あっという間に私は社会人となり、会社の同期に言えない愚痴も、職場のお局にいじめられたことも、ミスをして怒られたことも、2人には話せた。誰かに頼ることが苦手な私だったけど、2人が話を聞いて励ましてくれたおかげでたくさん救われた。

その翌年、ゆみちゃんも社会人となり、スミちゃんは大学4年生となった。
県外の医療関係の職場に就いたゆみちゃんとはなかなかタイミングが合わず、3人で連絡を取り合うことが少なくなった。
そして、当時スミちゃんは就活にすごく苦戦していたようだった。1週間に1度は必ずスミちゃんから電話が来て、私は就活やゼミの話をよく聞いていた。高校時代はスミちゃんのことを思うように支えられなかったし、話を聞いてほしいと、頼ってくれたのが嬉しくて就活の相談に乗っては、自分がしてもらったようにスミちゃんのことを全力で励まし、応援した。

そのしばらく後、スミちゃんから電話で内定の報告があった。
「就職先決まったよ!」
「ほんと!おめでとう!!!どんな会社?」
「なんとね、もぴと同じ会社だよー!びっくりした?春からよろしくね!」

ん?今なんて?私と同じ職場???
スミちゃんが私の職場が気になっていることも、採用試験を受けようとしていることも、微塵も聞いていなかった。スミちゃんとも面識があった私の2歳下の妹も、春から私と同じ職場で働くことはスミちゃんに先に伝えていたから、正直、親友と同じ職場で嬉しいような、でも親友だからこそ違う職場がよかったな、と複雑な気持ちになった。

そしてその春、スミちゃんと妹は私の職場に入社した。
入社後すぐは2人とも楽しそうに仕事をしていて、私の杞憂だったかなと思っていたけど、しばらくして妹は、私が以前いじめられていたお局からパワハラを受けていたようで、食欲もなく、顔色も悪くてとにかく妹のことが心配だった(その時は私もパワハラを受けている事実を知らなかった)。

スミちゃんが妹の同期だから何か知らないかと、藁にも縋る思いでスミちゃんに相談した。
すると、「そっか。なんか妹だからって甘えてない?それより聞いてよ、私の部署でさ~」と話もろくに聞いてくれず、すぐに話題を変えられてしまった。
他にも私が2人にしか話さなかった会社でのミスや、お局にいじめられていたこともスミちゃんが自分の同期に勝手に話していたことも分かってしまった。

ぷつり、何かが私の中で切れてしまった。
その日以降、スミちゃんと連絡することはなくなった。

「親友だから、助けてくれる」と依存しすぎていたのかもしれない

妹は適応障害を患い、会社を休職して、その後退職した。妹の退職後、職場で私への嫌がらせも始まり、色々なことがどうでもよくなり、私もその会社を退職することにした。

高校時代からお互い今まで支え合っていたはずなのに、話すら聞いてくれなかったスミちゃんの心の冷たさを、その時知ってしまった。
きっと彼女も社会人1年目で心に余裕がなくて、妹よりも親友である自分の話を聞いてほしかったのかもしれない。何かその日は、嫌なことがあったのかもしれない。
だけど、だけど。スミちゃんに妹のことも、会社を退職することも伝えようと思ってLINEの画面を開き、文字も打ってみたけど、最後の送信ボタンがどうしても私は押せなかった。

私も「お互い親友だから、きっと助けてくれる、話を聞いて励ましてくれる」とどこかで甘え、依存しすぎていたのかもしれない。
「他人に期待しすぎてはいけない、そしてずっと大切に築き上げた友情は些細な出来事でもあっけなく壊れてしまう」ということを私は知り、学んだ。

ゆみちゃんには妹のこと、仕事を辞めること、スミちゃんとのことを正直に伝えた。
彼女にとっては青天の霹靂だったと思う。この間まで3人仲良く、くだらないことで笑いあっていたのに、私たちのせいで関係がこじれてしまった。それなのに、ゆみちゃんは県外の自宅まで私を招いてくれ、「もぴ、美味しいもの一緒に食べ行こう」とドライブに誘ってくれた。そして私の話を涙をぽろぽろこぼしながら聞いてくれた。

また3人で笑いあいたい。友情が再構築できるようにと希望を込める

あれから3年が経過した。ゆみちゃんとは変わらず親友の関係が続いていて、毎年県外のゆみちゃん家に遊びに行くのが恒例になっている。ゆみちゃん、いつもありがとう。そして、ごめんね。
いつか、昔のように戻れたらと思うけど、彼女のことを許せるだろうか、笑って話せるだろうか、と3年経っても私にはまだ心の準備ができていない。スミちゃんだって何年も連絡を寄こさない私のことを、もう友人だと思っていないかもしれない。

だけど、何年後でもいいから、また昔のように3人でくだらないことで笑いあうことができますように。
そう壊れてしまった友情が再構築できるようにと希望も込めて、私はこのエッセイをしたためる。