27歳の私は、転勤を機に名古屋から地元福岡へ戻って来た。
せっかく地元に帰ってきたからと学生時代の友人に会うと、左薬指に光るものが。「最近結婚したけん、会って報告したいと思いよったんよ!」と言ってくれて嬉しかった。そして会話の中で友人から聞かれた質問。
「彼氏はいるの?」
そう、私はここ数年彼氏がいない。年齢的にも結婚ラッシュの時期で、親戚の集まりでは「彼氏はいるのか」「結婚の予定は」と聞かれてそろそろうんざりしてきていた。マッチングアプリもやってみたけど、なかなかお付き合いまでは進まなかった。そんな中、コロナウイルスによる自粛生活が始まった。
コロナ禍を機に、100のやりたいことをリストにした
遊びに行けない、彼氏はいない、友達となかなか会えない中、自分の時間に何をしようかと悩んでいた。そして、時間があるならどうせなら今までやったことが無いことに挑戦してみようと思った。
そして「やりたいことリスト」を作った。リストは100個になり、中には今まで興味があったけどやってこなかったこと。例えば刺繍やお菓子作りなど様々なことが並んだ。
リストが完成すると、その日から行動を始めた。まずは今まで読んだことがないジャンルの本を読むために、近場の図書館へ行った。私は本を読むことが好きで小説からビジネス書まで幅広く読んでいたけど、絵本などの児童書・詩集や医療系の本などを借りてみた。
すると金子みすゞの瑞々しい表現を知ったり、絵本を通して昔話を改めて読んで、「こんな話だったのか」と自分の知っている物語が新鮮に感じたりした。
本を何冊か借りて美味しいコーヒーを買って公園で読む。ここでも「コーヒーってこんな味なんや」と、今までのコーヒーはコーヒーという飲み物という括りから脱して、豆の違いが分かるようになってきた。味覚の成長だ。
次に、敷居が高いイメージで挑戦できなかったミュージカルへ一人で行くと、前から2列目という間近で観ることが出来た。テレビで見る俳優さんが出ており、初めての生歌にテレビとは迫力が違うと感動し、衣装の細かさや舞台の作りを自分の目で見ることで発見があった。
ひとりしゃぶしゃぶに挑戦! 食べたいものを食べる喜びを知る
続いてはしゃぶしゃぶを一人で食べることに挑戦した。これは一人で外食ができる人にとっては普通のことかもしれない。でも私にとっては「しゃぶしゃぶ=複数人で食べるもの」という刷り込みがあり、一人で食べることに抵抗感を感じていた。
では、なぜ一人で行くのか?それは人に気を使いすぎてしゃぶしゃぶを満足いくまで食べたことがないからだった。
私は周りの目を気にしすぎたり、相手のことを考えすぎるタイプで、複数人で食事に行くと注文係に徹する。グラスが開けば次の注文を促す。そうしているうちに食事の味が分からなくなって家に帰るとどっと疲れてしまう。だから今回はじっくり味わうために一人で某チェーン店へ行った。
店員さんから一人用の席に案内されると周囲から視線を感じた……気がした。その視線も気にせず食べ放題を注文し、お肉と野菜をたらふくしゃぶしゃぶして帰った。自分のペースで食べたいものを食べることがこんなにも楽なのかとストレスフリーな食事に大満足だった。
後日、この一人しゃぶしゃぶを職場の後輩に話すと、「一人でお店に入れることがカッコいいです!」と興奮ぎみに言われた。後輩は一人行動で周りから寂しい人だと思われるのが嫌だという。
一人で動くことは最初は心細いし、周囲の目が気になることは理解できる。私もそうだったから。でも、ここ最近のおひとり様を楽しむことで今まで関わりのなかった世界が開けて、そこから新しい出会いが生まれた。それに誰かに依存したり、周囲の目を気にする他人を気にする生き方から、脱皮ができていると実感した。
誰かと体験を通して感情を共有することももちろん素晴らしい。その中でも「私」という人とは一生付き合っていく。私はこれからもたった一人の「私」と向き合うことでこの尊い存在は大切にしていきたい。一人時間を楽しむ達人になりたいと思っている。