高校生の時の話だ。
私は埼玉の実家から、片道2時間近くかけて、都内の音楽大学附属の高校に通っていた。

ラッシュでの登校は大変だったが、男女関係なく、自分の好きな音楽について何時間も語り合えるのも、ただただ色んな曲を弾いて遊ぶのも、今まで知り得なかった世界で、仲間ができて、幸せだった。
大学と校舎が同じため、高校生、大学生の垣根を越えて仲良くなれるのも、大人っぽくてかっこよく見える大学生の先輩達を見て、キャーキャー騒ぐのも楽しくて、充実した日々を過ごしていた。

女子3人グループは家に泊まるほど仲が良く、最初のうちは良かった

高校といっても、音楽を中心に学ぶ場所のため、夜の22時近くまで、学校に残って練習することも多々あった。
そんな時は、普段一緒にいる女子3人グループのうち、私以外の一人暮らしをしているどちらかのうちに泊めてもらい、美味しいご飯を作ってもらったり、夜中までガールズトークに花を咲かせたりした。

最初のうちは良かったのだ。
でも段々と、歯車が狂い始めた。
3人グループのうちの1人が、夜遅くまで遊び歩くようになり、同級生から大学生までの一人暮らしの男子の家によく泊まるようになった。
でもだからと言って、一緒にいるのをやめようとまでは思わなかった。
その後、彼女からタバコの匂いがするようになり、タバコを吸い始めたことを知った。まだ17歳の時だった。
私ともう1人は、必死にやめるよう、正しい道に戻ってくるよう説得したけれど、彼女が喫煙をやめることはなかった。
たぶん、喫煙所という空間がひとつの居場所になっていたのだろう。
それでも、彼女であることに変わりはないからと、離れようと思うことはなかった。

必死にその子のことを考えて説得したのに、その子が流していた私の噂

ある日、その子の母親からうちに電話がかかってきて、「お宅の娘さんが男の人5〜6人と同時に付き合って、泊まり歩いていると娘から聞いた」と言われた。
驚きで声も出なかった。
彼女は自分が泊まり歩いていることを、友達の私もやっているし、私の方がひどいからそれに比べたら普通のことだと、母親に話していたようだった。
あんなに必死に説得したのに、その子のことを考えていたのに、裏切られたのかと、ダシにされていたのだと、少し経ってから気づいたら、悔しさと悲しさで立っていられないほどだった。
ただ、一度も男の家に泊まったことがない事を知っていて、往復4時間近くかけて通うのに、そんな大勢と同時に付き合うなんてできるはずないと、私の母親は信じてくれていたのが、唯一の救いだった。

次の日、周りの同級生達に聞くと、特に男子を中心に、私のそんな噂を聞いていたと言う。
それから段々と、学校に行くのが怖くなった。教室に入ろうとすると動悸が止まらず、彼女を見ると過呼吸になってしまい、学校に着くと熱が出るようになった。
同級生達が、私を見て噂話をしているように思えて仕方がなく、男子とは怖いと思ってしまって上手く話せなくなった。

知らなければびくびくして過ごさず、大切な友達のままでいられたのに

大学生になって、当時付き合っていた3つ年上の彼に、「私のこんな噂を知っているか」と聞いたら、
「知っている。その子本人にも言われたし、周りからも付き合うのやめたらと言われた。けど君がそんな子じゃないことを知っているから、君に伝えなかったし気にしていなかった」
と言われた。
3年経ってもまだ噂は無くならないのかと、驚きと同時にショックを受けた。そしてわざわざ付き合っている彼に、そんな嘘を言いに行く彼女の神経を疑った。
やっとその時、きっと彼女は、私が幸せなのも嫌だったのだと理解した。もう二度と、他人に深入りしない、信じないと決めた。

聞かなきゃ良かったと思ったけれど、私に言わないでいてくれた彼の優しさと、そんな子じゃないと知っていたという彼の言葉にとても救われたから、知れて良かったとも思った。
でも、その後大学を卒業するまで、過呼吸と発熱が治ることはなかった。

心底知りたくなかったと思う。彼女がそんな風に私のことを利用して、貶めていたなんて。
知らなければ、高校2年生から大学までの6年近くを、こんなにびくびくして、辛いまま過ごさなくて済んだのに。大切な友達のままでいられたのに、と思う。
今はやっと落ち着いて、家族以外にも信じられる人ができて、幸せで健康な日々を送れている(ただこれを書きながら手は震えているが)。だから、彼女の数千倍、数億倍幸せになることが、私の復讐だ。