自分のプライベート空間がない家での暮らしに不安を感じる日々

ときどき私は、私のための休日を作る。平日に有給休暇を取り、夫に内緒でひとりの時間を楽しむのである。

1LDKの広くはないアパートにふたり暮らし。自分だけの部屋はもちろんなく、小さなデスクが唯一の自分だけのスペース。「プライベートな空間」はないに等しい。今ではそれが当たり前の日常だが、当初は「自分だけのプライベート空間がないなんて、やっていけるのか……」と不安でたまらなかった。

私は田舎の一軒家育ちで、当たり前に自分の部屋があった。家族とはいえ、それぞれのプライバシーがあるし、自分だけの空間、自分だけの時間は必用不可欠だった。そして、それは誰もが同じだと思っていたのだ。
しかし、夫は違った。生まれた時から団地暮らしで、双子の兄弟と同じ部屋。自分だけの部屋ができたのは、社会人になってからだった。夫は「結婚しようというのに『自分だけのプライベート空間が欲しい』なんて、普通ないでしょ」と眉をひそめた。そんな私たちの折衷案が「それぞれの小さなデスクを用意する」ことだった。

夫には内緒。平日に有休を取る「わたしの休日」という最高の時間

ふたり暮らしが始まった当初は、生活の中の小さなことでイライラモヤモヤの連続だった。生まれ育った環境が違う人間同士がいきなり共同生活をするのだから、仕方ないことだと思う。しかし、自分だけの場所がない家では、そんな気持ちを吐き出し癒す場所もなく、精神的に辛い日々が続いた。

また、夫はふたりで過ごす時間を大事にしたい人だった。彼は「ひとりはつまらない。ふたりでいる方がいい」と言う。もちろん、私も夫と過ごす時間は楽しいし、大切な時間だと思っている。しかし私は「ふたりで過ごす時間も、ひとりで過ごす時間もどちらも大切」と思っている。最近はこのことの理解を得た上で、夫を家に残してひとりで出掛けることもある。だが、こうやって出掛ける時は何となく後ろめたく感じるし、「早く帰らなくては」と気持ちが落ち着かない。

そんな中、私を支えたのは「わたしひとりだけの時間」だ。例えば、通勤時間。ただ電車に揺られながら、ぼーっとしたり、好きなことを考えたりしている。
そして最高の時間を見つけてしまった。そう、夫に内緒で平日に有休を取る「わたしの休日」である。
帰りの時間を気にせず、どこで何をしても、誰にも咎められない。まさに「自由」だ!!

ひとりの時間は、頑張る自分を癒やしてあげる大切な時間

ある時は、以前から気になっていた映画を見に行った。時間があったので、はしごして2本見ることができた。その合間にファミレスで腹ごしらえをする。遅いランチを食べながら、映画の感想をまとめる。幸せな時間だ。

またある時は、事前にチケットを取っておいた演劇を見に行った。その日は朝からワクワクしながら着ていく服を決めて、いつもよりちょっといい化粧品を使って化粧をする。演劇を見た後は、近くのカフェに入り、美味しいものを食べながらこれまた感想をまとめるのだ。同じ作品を見た人の感想を見ながら、さらに作品の理解を深めるのもまた、幸せな時間である。

役所の手続きのために休みを取り、その後は遠出をせずゆっくりした時もあった。近場のショッピングモールで気になっていた洋服を見て、ちゃっかり試着もしてみる。家に帰ってからは、多忙で手を付けられていなかった身の回りの整理をする。領収書やレシートの整理、洋服の断捨離、スケジュールの整理等。一通りやって、自分が今いる場所を確認する。過去を振り返り、未来のことを考える。
「よし、頑張ろう」と思える。

私のための休日で得られるひとりの時間は、日々頑張る自分を癒してあげる大切な時間だと思う。それと同時に、長い人生の中で、自分が今いる場所を確認できる時間だ。過去のことを慈しみながら振り返り、これからの人生、家族のこと、キャリアのこと、趣味のこと……ゆっくり考えることができる。

今後もひとりの時間を楽しみながら、これからの人生、家庭も仕事も充実させていきたい。