知って後悔したのは、マッチングアプリで出会った男性のこと

知らなかったならしょうがない。
知らなかったなら後腐れなく諦められる。
それが私の信念だった。
しかし、今は知って後悔したこと、つまり「知りたくなかった『あのこと』」が一つだけある。
以前、「自信のない私と会ってくれるから好きになった、そんな恋愛はやめる」というエッセイで書いた彼のことだ。

11月上旬にマッチングアプリで出会った男性がいた。仮にTさんとする。
プロフィールには、「28歳 友達づくり目的」と書かれていた。プロフィールに設定されていた写真を見て、顔が好みだったためいいねを押したところ、Tさんとマッチした。
マッチ後はマメに連絡を取り合い、向こうから直接会わないかと誘われた。私は自分の顔に自信がなかったし、上手く話せる自信もなかったから断ろうと思っていた。
しかし、不安な気持ちをメッセージで伝えたら「それでもいいよ」という返事を貰えた。
結果的にTさんとは会うことになり、ファミレスでご飯を食べ、軽くドライブをしてその日は終わった。

ドライブで展望台に上った際、2人きりになった車内でTさんに口説かれた。
「夏橙ちゃんのことタイプなんだよね」とか「本当に彼氏いないの?そうは見えないけどなぁ」なんてことも言われた。今まで異性からそういったことを言われたことのない私は、その言葉に悪い気がしなかった。だから、その後も定期的に彼と会うことにした。

どんどん好きになった彼から、初詣で衝撃の告白をされた

1か月が過ぎるころにはTさんの家に呼ばれ、体の関係と言えるような関係になっていた。そして、私はそのころからTさんに惹かれていた。振り返ってみると、11月上旬から1月上旬までの2か月間、週1、2回は彼と会っていた。クリスマスも年末年始も、卒論を書く時間を切り詰めてまで会う時間を捻出するようになっていた。
人付き合いが苦手な私としては珍しく、そんな変化すらもTさんのことを好きだと自覚させる要素となった。

そして新しい年が始まった2022年1月、初詣に誘われた私は、Tさんと近所の神社を訪れた。そこで、生まれ年ごとの運勢が書いてあるボードを見ているとき、Tさんは私に衝撃の告白をした。
「俺さ、本当は話してた年齢よりも上なんだよね」と。

実際の年齢は35歳。聞いていた年齢の7歳上で、私と比べると13歳も離れていた。
その後も軽く話をしながら歩いたり、買い物に行ったりしたが、私は全く集中できなかった。一方で、Tさんは何事もなかったかのように振舞っていて、悪びれないその態度にイラっとした。

自宅に帰ってからも頭の中は年齢詐称されていたことでいっぱいだった。姉に相談したくても、騙されていたことを話すのは恥ずかしく、言えなかった。
結局、SNSで相談ツイートをし、何人かのフォロワーから返信があったが、みんな答えは「その人とはもう会わない方がいい」だった。

知らないままだったら…?いまは知って別れて正解だと思う

好きな気持ちを諦めきれない私は、1月末までずるずると会い続けていたが、2月に入ると卒論執筆を理由に会うのを止めた。
卒論を書きながら、「あと数か月で私は卒業して他県に引っ越す。それをTさんも知っていたはずなのにどうして年齢のことを話したんだろう。黙っていれば、私はずっと騙されたことに気がつかなかったのに」と考えていた。

思えば、1月の最後に会ったときのTさんの態度はとても悪かった。待ち合わせ時間を1時間遅らせた上に、昼ご飯を食べたら「もう解散しよっか」とも言ってきた。ぞんざいな扱いができるほど私はどうでもよい存在だったのかもしれない。

卒論発表が終わって時間に余裕が出てきたころ、私はTさんに会うのを止めたいという旨のLINEを送った。理由は書かず、返信にはきつい言葉が並べられていたが、私はそれでもよかった。

もし、初詣の日にあのことを知らされていなかったら、私は今でも、社会人になったそのあとも、Tさんと会っていたのかもしれない。けれど今は、事実を知ったうえで関係を切って正解だったと思っている。