お気に入りの制服スタイルは、指定のスカートに白いワイシャツ、その上にラルフローレンのエメラルドの刺繍が入った、白いタイトな鍵あみニットの重ね着だった。
このニットは高校3年生の時に母に買ってもらい、それ以降5年以上愛用した。誰とも被らない上に、当時はまったアメリカのテレビドラマ、ゴシップガールに出てくるセリーナが着ているようなコンサバ感。程よいタイトさと胸元の抜け感が、18歳の自称大人な私にドンピシャだった。
それこそ制服を脱いだ後も、今度はシャツ無しの1枚で、制服よりもうんと短いZARAのミニスカートと合わせるのがマイスタイルだった。

思いを洋服やアクセサリーに託すようになったのは、いつからだろう

洗いすぎてよれよれになり、手首と首元の生地が伸びてきても、なかなか処分することができなかったのは、あまりにも多くの思い出のシーンを一緒にいたから。
高校の卒業式、大学での大切なプレゼン、海外への短期留学……。そして大好きな彼とのデート。私の20代前半の相棒だった。

自分の思いを洋服やアクセサリーに託すようになったのは、いつからだろうか。
例えば試験の日には赤いランジェリーで、手首にはパールのブレスレット。理由なんて特になかったように思うが、身なりにルーティンを作ることで、少しでも勇気をもらっていた。
そう考えると、洋服や化粧品など身につけるものの持つ不思議な力を感じぜずにはいられない。

1回目のデートで主導権を握れなかったことの反省で、2回目は8センチヒールで無理やり背筋を伸ばした夜。喋りすぎたと後悔した次のディナーでは、赤リップで口元に緊張感を乗せた。女性として自信がなくなった翌朝は、下着を身につける前に強めの香水を身に纏う。
そんなの取り繕いであるのは分かっているが、その時1番欲しいものを鎧のように身に固めることができるのだ。

中身や知識だけで乗り越えられないこともあり、勇気になる鎧が必要だ

だから今1番欲しいものは、そんな勇気をくれるトップス。しかし、これがなかなか出会わない。
同じブランドに行けばあるかと思ったが、どうもしっくりこない。同じあの形が欲しい訳ではなく、今の私にあったものが欲しいから難しい。嫌なことがあってもそれを着ていれば胸を張って、背筋を伸ばしたくなるような。

しかもこの春より、大学院に社会人枠で進学することになった。28歳が22歳と肩を並べて研究するのだから、大胆さだって必要。自信がなくなった時に励ましてくれる何かが必要だと予感している。ペン一本で世界を変えてやろうという野望のある同志だとしても、この6年のギャップをプラスとマイナスに思わせる相手でもあるのだ。

そんな思いを嘘でも消し去ってくれる服が良い。なんでも中身を磨けば、脳内に知識を溜めれば乗り越えることができる訳ではないのは、この数年で学んだこと。やっぱり鎧が必要な時があるのだ。
それではその鎧を脱いだ時に何も解決しないではないかと言われても、その一日、たった数時間でも力をくれるものに頼らざるを得ないのは弱さではない。それだけ、特に女性が生きづらい世の中であることの証拠である。
見せかけでも私をハグするように支えてくれる鎧を身に纏い、数年後に降り立つガールズの社会を今日も耕していく。