会話を楽しいと感じなかったから、どこか違う世界の事みたいだった

「あ。私、今馬鹿にされているな」
女の子の世界は残酷で、割と小さなころからそう感じる事があった。目には見えない上下関係は常にあって、それは可愛いとか頭がいいとか運動が出来るとか、そういうそのひと個人の全部で構成された性格・コミュニケーション能力の強弱だったと思う。

私は特に、怒られるような行動をしなくてもという事なかれ主義だったから、主にゲームセンターとかカラオケとか、楽しいけど行く必要のない場所には縁がなかったし、クラスの華やかなグループに誘われたプリクラとか、可愛い子の誕生日パーティーとかそういうイベントじみた遊びがよく分からなかった。
だから、クラスの大半の子との会話はそもそも話題が合わなくて苦手だった。そして、そんな子達と話をする時、決まってあの「馬鹿にされているな」という感覚を持った。
でも、私としてはその会話自体が楽しいと感じない類のものだったから、どこか違う世界の事みたいで、痛みを感じる事はなかった。

好きだった友達が遠くに行って悲しかっただけ、ではなかった

そんな私でも、同じあの感覚に痛みを覚えた事がある。それは、私と同じタイプだと思っていた友達が離れていった時だった。
それまで、同じように好きな本や昨日のドラマ・アニメの話をしていた友達。好きな物が同じで、学力や運動能力も似ているそんな友達が、クラス替えや部活動によって少しずつ遠くなり、たまに見かけてもあいさつするくらいしか、話す事がなかった。
そうしている内に、知らない人のようになっていて、その距離を理解した時、私はあの感覚に痛みを覚えた。
その感情の根底は、似ていると思って好きだった友達が、遠くに行ってしまって悲しかっただけかもしれない。でも、それだけでないことも私は感じていた。

私はきっと、心のどこかでその友達の事を馬鹿にしていたのだ。いつかのあの別の世界の事だと思っていたクラスメイト達のように。
もちろん、似たような趣味で話もあったし一緒にいて楽しかった。でも、本当に心の底の方で、私だけの価値観で、私はその友達よりも少しだけ、上だと思っていた。そして、その上下関係は変わらないと疑っていなかった。
私が助けてあげないといけないと思い込んでいた。だから、その友達が私の知らないうちに新しい友達との関係を築いて私の助けがいらなくなり、その新しい関係で私より上になったと感じたからこそ、何も感じなかったあの感情に、痛みを覚えたのだと知った。

私から離れた友達は、私の事をどう思っていたのだろう

私に痛みを教えてくれたあの子は、私と会話してる時、どんな風に感じていたのだろう。
結局、私もどこか違う世界で自分とは無縁だと思っていた、上下関係の中にいたのだ。私は、同じタイプの子と一緒に居ればお互いに痛みを感じずに済むと思っていた。
でも、本当は自分が痛みを感じていなかっただけで、相手はそうではなかったのかもしれない。
大きな痛みは感じなくても私はあのクラスメイト達が嫌いだった。私から離れた友達は、私の事をどう思っていたのだろう。嫌いだったクラスメイトと同じように、心のどこかで馬鹿にしていてそのことを知らずに接していたと気づいた今では、離れていってしまった友達にそれを聞く勇気はない。
だから、私も上下関係に無縁ではなくて、自分の中にも周囲の人に上下関係を付ける感覚があるのだと、知って行動したい。知らないまま行動するのと自覚して行動するのではきっと何かが違うはずだから。