「10万円あったら、何が欲しい?」
新型コロナウィルスで世界が混乱する中、10万円が国民に配られたのは記憶に新し……いように思えてもう2年も前になる。
その出来事から遡ること……多分10年くらい前。私は色んな人に「10万円あったら何が欲しい?」と聞いていた。

コロナ禍で10万円が配られることになり、友人や両親に尋ねた使い道

当時私は、一眼レフのカメラが欲しかった。10万円あったら。ミラーレスのカメラと望遠レンズに手が届くか、ギリギリ無理か……ケースも欲しいけど……なんて、毎日夢想していた。

友人にも聞いた。ある人は服を、ある人はゲームを、ある人は漫画を大量に買うと言っていた。新しいゲーム機を買う人、PC購入の資金にする人、旅行に行く人、それぞれに理由があって面白かった。一緒に手に出来るものを考えるのは、一緒に夢を見るようで。

同じ質問を両親にもした。父は趣味人だから、私と同じような返答だった。ミラーレスカメラとレンズ。後々、彼は本当にカメラと望遠レンズを買ったけど、「重たい。」と一言つぶやいて私にくれた。今でも私の相棒だ。
コロナ禍の10万円は、寄付に充てていたように思う。

母はこう言った。
「10万しかなかったら…何も買えやんで。」
衝撃だった。なんて夢のない……欲しいもの、何でもとは言わないけれど、結構手にできるのに、そんな夢も見ないなんて。
今ならわかる。1人暮らしでも毎月のカードの請求は、10万円なんてあっという間だ。何なら家賃ととんとん。10万円なんて、生きていれば結構当たり前に支払っている(もちろん、う゛っ…とはなる)。

母が言った「10万円の価値」。家計を預かっていると生活費になる

家計を預かる彼女にとって、10万円は食費であったり、学費であったりの値段だろう。さほど「夢のある」話ではなかったに違いない。それでも、父の夢物語との対比が私には鮮やかに映った。彼女の人生の中心は、少なくとも彼女自身ではなかったのだ。彼女だけのために使える10万円なんて、母は手にしたことがあったのだろうか。
そういえば、彼女はコロナ禍の10万円を何に使ったのだろう。聞くことはできるが、何となく日々の生活費になったのではないかと思う。

私に今10万円あったら、何を買うだろう。ゲーミングPCが欲しいけれど、10万円では足りないな。強欲なので色々欲しいものはあるけれど、当時の母と同じ、「帯に短し襷に長し」みたいな額だなと感じてしまうくらいには、つまらない大人になってしまった。
旅行に行きたい、もしくは旅好きの両親を連れて行きたいと思うけれど、時代はまだそれを許してくれないし。なかなか大人というのは、夢を見るのも難しいものだと思う。

10万円は生きていれば突然必要になるし、ポンと飛んでいく額だ

ちなみに私のコロナ禍の10万円は、パソコンの購入費用の資金になった。例の如く10万円では買えなかったけれど、足しにした。当時パソコンを仕事でガンガン使っていたのに、突然壊れてしまったから慌てて買うことになった、今この記事を書いているラップトップ。

せっかくの10万円だ、もっと夢想を楽しみたかったし、実際届くことになった時期……つまり私のパソコンが壊れた時……それまでは結構色々夢想していた。画材とか、モニターとか、服とか。全部夢で終わってしまっている。
夢想も、もうちょっと楽しみたかったのに、慌ててパソコンを買うことになったから叶わなかった。

……実際そんなものだろう。10万円なんて、生きていれば突然必要になってもおかしくない金額だ。去年突然入院して手術した時に払った額も、年明けに引っ越しで使うことになった額も、今月の家賃も、大体10万円だ。10万円は、思ったよりポンと飛んでいく。

でも、私は未だによく夢想する。10万円あったら何が欲しいだろう。100万円ほど途方もない額ではないが、1万円ほど手ごろでもない。夢想するのに「ちょうどいい」のだ。届きそうで届かないその高さが。

10万円あったら。あなたなら、何が欲しい?