私のちょっとしたエコを実践するようになったエピソードを紹介させていただく。
三年前の冬、私は北海道へ行く飛行機の中にいた。私はそのとき学生だったが、農業をやりたいと一念発起し一人北海道へ旅立ったのだ。
私を迎え入れてくれたのはバイオダイナミック農業を実践しているという農家の奥さんと旦那さん。それから、私と同じようにボランティアで農業を学びに来ている方が二人いた。一人は三十代の男性で調理師をしているという。もう一人は私と同じ年齢の女の子。調理師の方は将来自分のお店を持つことを夢にここで学んでいるという。学生の女の子は学校に行きたくなくなり、家族に勧められここに来たという。

洗剤不使用、電気も最小限、数日おきの風呂。価値観が変わった1か月

ここでは朝は六時から始まる。朝食の前に牛舎に行き、牛の世話と搾乳をする。私は初めて牛の乳を手で絞ったが、はじめはいいものの後半は手が疲れて力が入らなくなってしまった。牛はオスとメスに分けられ放し飼いにされていた。
ご飯はボランティアの人達が交代で作った。私はあまり自炊をしたことがなかったので初めは戸惑ったがだんだん料理をするのが好きになった。食器を洗うのに洗剤は使わず、油は新聞紙で拭き取り手作りのスポンジで食器を洗った。電子レンジもなく、炊飯器も電気ではなくガスで炊くものだった。
私たちの仕事は毎日あり、薪割りや大工仕事、種まきや肥料作りなど色々なことを体験させていただいた。
夕ご飯をみんなで食べた後にデザートとして自家製のヨーグルトにミルクジャムをかけて食べる時間が至福だった。
お風呂はみんな面倒臭いのか数日に一回しか入らなかった。近くに銭湯があったのでよくみんなで銭湯に行ってご飯を食べて来るのが楽しかった。
この農家では電気を全て太陽光発電で賄っていた。トイレも汲み取り式で定期的に業者が回収に来た。
私はこのような暮らしをしたことがなかったので、初めは抵抗と戸惑いを感じていたが、一ヶ月も暮らしていたら慣れてしまった。

選んだのはセラピストという職業。地球に優しい選択は人にも優しい

家に帰ってからも食器を洗うときに洗剤を使うことに抵抗を感じ、オーガニックの洗剤に変えたりした。オーガニックコットンの衣服を買うようになり、オーガニックの食品を買うようにもなった。
地球に優しい生活を実践することで自分にも優しい生活を実践していることに気付いた。
私は自分のやりたいことが分からず途方に暮れて北海道へと旅立ったが、地球に優しい生活をしていくうちに自分自身も洗われすっきりした気持ちで家に帰ることができた。自分のやりたいことの方向性のようなものも自然に分かり、料理やオーガニックのことを学び始めた。学んでいくうちに私は地球や人を癒していきたいと思うようになり、セラピーも習い始めた。私は今、セラピストとして仕事をしている。まだまだ半人前だが人や動物を癒すことにとてもやりがいを感じている。地球に優しい生活も続けている。

勉強や人間関係に追われていたあの頃、北海道に行ってよかった

農業ボランティアをすることで自分の世界がここまで変わるとは思っていなかった。学校では勉強に追われ、人間関係に悩み、自分が誰なのか分からなくなり、ぼろぼろの状態になっていたが、大自然に触れ、美味しいものをいただき、地球にも自分にも優しい生活をすることで元気が出てきて自分らしさを取り戻すことができたと思う。北海道で農業をすることにはすごく勇気が必要だったが、やりたいことに従い行動してよかったと思っている。何より学生の頼りない私を快く受け入れてくださり、たくさんのことを教えてくださった農家の方々に心から感謝している。北海道で過ごした日々は今でも忘れられない大切な思い出だ。