仕事やおでかけの合間に過ごす「ひとりの時間」が、私は好き

ひとりは好きだけど、家にひとりは好きじゃない。
普段家族といる家に、ひとりでいるときのしーんと静まり返った空気と、寂しさはいつも苦手だ。
ご飯を作る気にもならないし、少し張り切って作ってひとりを楽しもうと思っても、いざ食べ出したら半分ほどで味気なく感じてしまったりする。
じゃあひとりで出かけるか、という気にも、めんどくさいのと貧乏性なので、なかなかならず、家でヴァイオリンの練習をしよう、と思いつつ、ぐーたらしてしまう。

そんな寂しがりで出不精でめんどくさがりな私だが、仕事や用事の『合間のひとり散歩』は大好きだ。
例えばカフェに入る時。
店員さんのコーヒーの淹れ方だったり、置いてあるインテリアだったり、スイーツのラインナップを見る。
この盛り付け方は真似しようとか、可愛い食器だなとか、これなら作れるなとか、この食材の組み合わせいいな、などとちょっと研究させてもらいながら、ゆったりした時間を楽しむ。
そしてたまに、苦手なくせにMacBookを開いたりしてみて、カタカタと文字を打ちながら、世の中の働く女性の真似っこをして、内心「ふふふ。かっこいい女みたいだな」とひとりで盛り上がっていたりする。

ひとりで行く中華料理屋もステーキハウスも、立ち食い海鮮丼も好き

そのほかにも、大学生の時に、ヴァイオリンを楽器屋さんに預けている合間に、中華料理屋さんにひとりで入ったことがある。
細い階段を降りた先にある『知る人ぞ知る』感満載の、定食メインの中華料理屋さんだ。
少し暗い店内に、ワイドショーが流れる小さなテレビと、サラリーマンのお昼休みと思われる、スーツを着た男性ばかりのところに、淡い色の洋服を着た、ロングヘアの二十歳そこらの女子がひとりで座って、回鍋肉を注文しているのである。

周りからしたら、若干謎だろう。運良く?運悪く?私の頭上にあるワイドショーを見るふりをして、ちらっとこちらの様子を見る男の人たちと、目が合うたび気まずそうに逸らされるのが、何だか面白かったのを覚えている。
回鍋肉は、ザ!中華!という感じのパリッとしたキャベツとテンメンジャンの濃い味付けでとても美味しかった。

そういう『似合わない人がいる』という目で見られるのも意外と嫌ではなくて、疲れているから力の付くものを食べようという名目で、レッスンの合間にステーキハウスに行って、格闘技をやっていそうな男性達の横で、ゆっくりゆっくり味わってステーキを食べたり、仕事のリハーサルが築地だった時には、ひとりでグーグルマップを頼りに市場の方へ歩いて行って、立ち食い海鮮丼を食べてるところを、観光客の女の人に「Oh Japanese girl! So cute!」と言って、写真を撮られたこともある。
何が「So cute!」かわからないけれど、きっと、背丈も小さく、日本の女の子らしい可愛い洋服を着て、海鮮丼を食べるというのが、その方の日本のイメージにぴったりハマったのだと思う。
海鮮丼は安くはなかったけれど、魚が新鮮でとても美味しかった。

美味しいものは、ひとりで食べても、誰かと食べても美味しい

そんな風に、ちらっちらっと不思議そうな視線を感じたり、物珍しそうな顔で見られる度に、可愛いものが好きな女の子は薄暗い中華屋さんにひとりできたりしないと思ってました?
ステーキをひとりで食べたりしないと思いました?
築地で海鮮丼立ち食いなんて、しないと思いました?

ふふふ。人は見かけじゃないんですよ。
人生楽しそうでいいでしょ?女のひとりぼっちも案外いいものですよ。と、内心思っている。

美味しいものは、ひとりで食べても誰かと食べても美味しいし、入るお店に容姿や服装、人間的なキャラクターは関係ないと思っている。
男一人でスイーツパラダイスに行っても、フルーツパーラーで可愛いスイーツを頼んでも、シナモンカフェに行ってもいいと思うし、女一人で、ステーキハウスに行っても、焼肉に行っても、立ち食い蕎麦屋に入ってもいいと思う。

もし入りたいお店の中に、自分と似たタイプの人がいなくて、周りの視線を感じたなら、不安になるのではなく、「ねぇびっくりした?似合わないと思った?でもここのお店美味しいよね?見たいなら私のこといくらでも見ていいけど、私はあなたのこと見ないし気にしないわ。だってせっかくの美味しい料理が冷めちゃうもん」と強気に、見せつけてやる心意気で私もいるし、もし勇気が出ないという人がいるなら、日本のどこかに、こんなちんちくりんがひとりで美味しい思いを楽しんでいるのだ、それはなんだかずるいぞと思い出して、ぜひとも仲間になってほしい。