ステイホームになるよりも前から、私が家に一人でいる時にたまにすることがある。
ダンスだ。ちなみにポイントは、ダンスをするだけではなく、それを録画して知り合いに送りつける点だ。むしろこちらの面の方が重要かもしれない。
送りつけられる知り合いも多少可哀想だが、送りつけても嫌がることはなさそうな人をこちらも選んでいる。さすがに知り合い全員に送る、などという無差別テロみたいなことはしていない。

ダンス動画を送るのは、踊ったことを誰かと共有したいから

私の周りにはほとんどダンスをする人がいないので、そういう人からしたら、私のダンスなんていうのは興味がないにもほどがある、というレベルのものだと思うのだ。プロになれるほど上手くもないし、相手が知っている曲で踊るわけでもない。
それでも送るのは、ただ単純に自分が踊ったということを、ある種の記録として見てほしいからだと思う。別にものすごく褒めてほしいとか、そんな傲慢なことは思わない。
広く言えば、人間誰しもそういう側面があると思う。何か自分のしたことを共有したい、といったような気持ちが。それとも私だけであろうか。

具体的にどんな流れでその共有が行われるか。まずは動画を撮る前に、振り付けを覚えるところから始まる。当然だ。
家のテレビでYouTubeをつけて、何度か動画を流す。基本的に女性の韓国アイドルの曲を踊ることがほとんどだ。
日本の音楽番組と違いフルサイズ披露なので、それを見ながら適当に体を動かして、踊れそうなところを探す。大体30秒から1分いかないくらいの長さだ。
そこまで興味のない相手に、ダラダラと素人の、しかも知らない曲のダンスを見せるわけにはいかない。もっと短ければ、30秒にも満たない時もあると思う。毎回、細かく秒数まで見ていないのでよく覚えていないが。

踊る箇所が決まったら、後は踊るメンバーを選んで、何度か流して練習する。撮れそうだな、と思ったら一度録画してみる。動画を見る。大体しっくりこない。
当たり前だ。すぐに納得出来る仕上がりで踊れるようになるわけがない。
これを、自分が動画を見て人に送れると思える状態になるまで何度か繰り返す。大体30分ぐらいだ。

ダンスの動画を人に送る。得たものは自己開示なんだと思う

振り付けは真似している程度で、完璧にコピーしているわけではない。うまく体がついていかない時は映像の通りに踊らずに、適当にそれっぽくごまかして踊る。誰かに振り付けの精度をチェックされるわけではないので、そのあたりは適当だ。
何度か録画して、送れそうなものが撮れたら不要な所は編集して相手に送る。既読がついたところで、相手が全部動画を見ているのか正直分からないが、それでも構わない。触りの数秒くらいは見てくれているだろう。それで私は満足なのだ。

そして私は送った動画を毎回LINEに保存している。時々見返すと、この時は痩せていたなあ、とか髪の色が明るいなあとか、当時は気づかなかったことにも気づかせてくれる。
一番最初にこれをやり始めてから、もう数年経つが、ダンスのスキルが上がったようにはあまり思わない。だがもしかしたらこれをするようになって、以前よりも自己開示が出来るようになったのではないかと思う。

趣味のダンスが私を少しだけオープンな人間にする

なぜそう思うのかと言えば、時々マッチングアプリの人と会う時に、人見知りしなさそうですよね、と言われるのだ。
確かに初対面の人でも異常に緊張したりして、普段の自分が出せない、などということはまずない。以前は、人見知りです、と自分から言っていたくらいだったのに。

自分から歩み寄る姿勢。見せなくてもいいものを、あえて自分から見せていく。
趣味のダンスが、私を少しだけオープンな人間に変えてくれたのかもしれない。