500円玉と携帯を握りしめて、あてのない散歩が私の趣味
天気がいい日に外を歩いて自然を感じる。こんな行動は人間になくてはならないものではないだろうか。
いつの間にかパソコンに向かう日々。気づいたら泥団子を作る世代すら終わっていく感覚を身近に感じる。
大人になれば仕事で椅子に座り、コンピュータに向かう日々が続いていた。そんな時、あてのない散歩が私の趣味となっていた。
行くあてもない道というのは、歩く疲れを忘れさせてくれる。ただポケットに500円と携帯を握りしめて家を出る。フラフラと好きな時間に出かけ、喉が乾けばコンビニや自販機でコーヒーを買おうだとか、そんなことしか考えない。
これが重要なのである。一人じゃなくたって同じことが可能なのだ。友達とたわいもない会話をし、次にコンビニが見えたらコーヒーを買って、公園を見つけたら休憩しよう。
こんな生活を週に2回くらいのペースでしていたら、3時間ぶっ続けで歩くことも苦にならなくなってくる。万歩計はディズニーランドで丸一日歩くくらいの歩数を示していた。
母の誘いに乗り、SUPとビーチクリーン運動に参加
そして、散歩以外は川や海に行って水の音を聞き、自然の涼しさを体感し、ただぼーっと過ごすことが大好きだった。
ある日、週末に母からSUPというスポーツをしに海に行こうと誘われた。実はそれは母の友達がインストラクターで主催する体験だった。
自然のアクティビティに飢えていた私は即決。詳細を聞くと、SUPをする前にピックアップと称されるビーチクリーン運動に参加すれば、SUP体験の金額が割引になるらしい。いわゆる海のゴミ拾いだが、自分が遊びで海を使う前に掃除をするという意味では、なんだか気持ちがいい気がして参加することにした。
私の住む地元は海に面していて、SUP体験の場所まではそんなに遠くはなかった。当日の朝7時、眠い目を擦りながらその場所に着くと、約20人の15歳〜60歳くらいの人が集まっていた。
自転車乗りのおじさん、すぐ近くでカフェを経営する人、家族連れ、ママさんと、意外と皆んなパワフルで驚いたことを覚えている。
着くと早速ピックアップ開始!ビーチのゴミ拾いは初めてだったが、探せば探すほどゴミが見えてくる。二人で少し歩けば、家庭用ゴミ袋はすぐいっぱいになるほどだ。
「誰のサンダル?怖いね、ちゃんと二足揃ってる」
「ゴムでできたくまの人形かわいい!」
あちこちで面白い会話が飛び交っていた。
海のごみがいつもあるという現状は、違和感でゾッとする
思えば、こんな人数でひとときの時間を共有したのはいつの日だっただろうか。最後はみんなで取った各々のゴミ袋や火ばさみを持って、笑顔で記念写真を撮った。
SUP体験は終わったが、ゴミ拾いは自主的にできる。後日、砂浜の上を歩くという運動と掃除を掛け合わせ、友達や家族を引き連れてゴミ拾いをするようになった。くまの人形や海外から流れ着いたような面白いゴミに淡い期待を膨らませていくが、たまにある嬉しさがいいところであったりもする。
しかし、訪れても訪れても海のゴミがいつもある現状にはゾッとするような違和感を覚える。拾えるゴミの種類は、浜辺でのバーベキューのゴミ、ポイ捨て、漂流ゴミである。
ゴミが環境に影響しているというニュースは、海の生き物が小さなプラスチックやビニールを食べてしまっていることに限らないと感じる。大小様々な金属類がそこかしこに落ちている。
たとえば、捨てたり落ちたりした空き缶が風化して蓋だけになった金属が、海で遊ぶ自分や大事な家族の安全を脅かすかもしれない。ただ正義感だけでなく、みんなで気軽にできるアクティビティの一環だと思って、地球に優しい体験が日常的に広まるといいなと思っている。