業界のルールに従い、配属が営業でもOKと面接で模範解答した
私が新卒で入った業界には、「総合職採用の初期配属は原則営業」という謎の風潮がある。
営業以外の職種を第一希望にしていた私に、最終面接の前の人事の面接で「長女さんの行きたい部署に初期配属で行けなくても大丈夫ですか?」と質問してきた。「営業が初期配属でも大丈夫ですか?」という意味だと察した私は「入社したらまずは現場(営業)で自社のビジネスモデルや他社からの評価を知り、その経験をもって希望の職種でキャリアを積みたいと考えています」と答えた。自分で言うのもなんだが、人事が求めていた通りの模範回答だったと思う。
嘘ではなかったが、「営業で経験を積むこと自体は自分にとってプラスな経験になるのは分かっているが、2、3年後には希望の部署に異動したいです」「何なら最初から希望の職種で経験を積みたいです」というのが本音だった。
ただ、ここで主張しても、会社の原則ルールは変わらないだろうし、面倒くさい新人と思われるのも嫌だという忖度もあり、言わなかった。
もちろん、この面接を経て配属された先は営業だった。
社内公募の「原則」を破って異動した同期は「なぜ行動しないの?」
そんな中途半端な気持ちで配属されてしまったため、怒られた時も、褒められた時も、「自分にとってこの部署は通過地点でしかない」と思ってしまい、仕事に身が入らない状態が続いた。
上司も先輩も、一人前の営業になれるように指導してくれているのに申し訳なかった。また、時間がたつにつれ、この部署で時間を浪費しているのではと焦りを感じるようになってきた。
私の会社には社内公募という、自ら手を挙げて希望の職種・部署に応募できる制度がある。しかし、「原則現部署で〇年以上経験を積んでいること」というルールが決まっている。その原則ルールに従うと、応募するにはあと数年同じチームにいないといけなかった。
キャリアに関してのもやもやが溜まっていっていたある日、仲が良い同期が異動すると聞いて連絡を取った。本来ならまだ異動には早すぎる時期だった。
なぜ異動になったのか?と聞いた私に、その子は「元いた部署の仕事がつまらなかった」と言った。「だから、希望部署の事業部長が参加する飲み会に潜り込んで、自分で作ったレジュメでプレゼンしたんだよね」と。
まさかそんな方法で実際に異動できる人がいるなんて、と思った私は、自分のキャリアの悩みをその子に打ち明けた。
「公募があるじゃん。応募しなよ。」というその同期に、「原則〇年のルールがあるからまだ私には早いんだよね」と言うと、こう返された。
「やりたいことがなくて現状に不満なだけならそれでもいいと思う。でもやりたいことが決まっていて、できることもあるのに、なんで行動しないの?」
あまりにも正論過ぎて、何も言い返せなかった。次の日に私は、公募の募集要項をもう一度見返し、希望業種に応募することを決めた。ルールが「“原則”〇年」なら、例外に自分がなるしかない。
やりたいことに正直になって応募し異動。自分の決断次第だった
やるからにはちゃんと準備しようと、希望の部署に在籍する先輩にコンタクトを取り、レジュメの添削や面接の対策をしてもらった。また、自信をもって自分を売り込めるよう、営業の仕事でも成果を残した。
そして準備や周りの協力もあり、公募に受かり、その部署に異動できることになった。後で上司に聞いたら「熱心に準備してきたのが一番伝わったから合格にした」と言われた。
やりたいことに正直になり、それを実際に自分の仕事にするのは難しいと、異動した今でも日々感じている。ただ、本当にやろうと思うのであれば、社内の異動に限らず転職という選択も、もっと言えば起業という選択もあるし、選択肢はたくさんあって、あとは自分の決断次第だということにこの経験を通して気付くことができた。
わがままを押し通すのではなく、かといって耐え続けて自分の気持ちにふたをするのではなく、自分がやりたいことをできる行動の選択肢を探して決断を続けながら、私は今後も自分のキャリアを切り開いていきたい。