告白されたとき、手足の先から冷えていくような感覚がした

「好きです。付き合ってください」
そう言われたら、あなたならどうするだろうか?
少し考えてみる。混乱する。でも、ちょっと嬉しい。
こんな気持ちになるのだろうか?

でも私は違った。
その言葉を聞いたとき、私に訪れたのは、恋のときめきや嬉しさではなく、“絶望”だった。
私には私自身に向けられたその“好意”の意味が分からなかった。
好きって何?どこが好きなの?普通の好きと何が違うの?何?なに?なに……?
頭の中でぐるぐるとこだまする。

私の友人は言った。
「告白されると心が温まる感じがするの」

でも私の心はまるで氷のよう。告白されたとき、手足の先から冷えていくような感覚がした。おまけに震えも止まらなくて、どうしたらいいのか分からなかった。
告白相手から「大丈夫?こんなこと言ってごめん」と言われたのも一度や二度ではない。
こんな私を好きになってくれたのに、私は何を言ったらいいのか分からなかった。

私は美人なわけでもないし、性格がいいわけでもない。けれど、告白される機会はあった。
告白するために相手がどれだけの勇気を要したか。私にも想像することはできた。
でも、だめなのだ。相手の好意や付き合うことを考えるだけで、心のどこかがざわざわしてとてつもない不安に襲われてしまう。

友達の恋愛話、少女漫画で繰り広げられる恋愛も理解できなかった

多分、私は変わってしまうのが怖かったんだと思う。
「今まで友達として仲良くしてきたのに、もうその関係に戻れないなんて嫌だ」という気持ちが強かった。相手は友達の壁を越えてまで私と向き合おうとしてくれたのに、私は相手の勇気を握りつぶしてしまったのだ。
「変わってしまうのが嫌だから」という理由だけで。

そう思ってしまったときから、私は人の好意に対して嫌悪感を抱くようになった。
人の好意が嫌だというのは随分贅沢な悩みだ。こんな私なんて愛される資格はないのに。
私に想いを告げてくれた人の中には「それでもいい」と言ってくれた人もいた。けれど、私は「お願い。友達のままでいさせて」と愚かにも逃げ出してしまった。相手の気持ちを分かろうともせずに。

それからずっと、私は自分のことをおかしい奴だと思ってきた。
“友達の好き”と“恋愛の好き”の違いが全く分からない。だから友達の恋愛話、少女漫画で繰り広げられる恋愛も理解できない。
そりゃあ、好きな人から告白されたら嬉しいことは頭では分かるけれど、「友達としてではなく、恋愛感情としてキミが好きなんだ!」という台詞を見ると頭の中はハテナでいっぱいになってしまう。

だから尚更、私には恋愛なんて理解不能な出来事だと思っていた。
あの時までは。

初めて抱いたこの気持ちを、捨てたくないと思ってしまった

あの人と出会ってから、私の世界は変わってしまった。まるで異次元に迷い込んだような不思議な感覚。
理解不能な出来事すぎて、恋愛についての本をたくさん読んだ程だ。
心ここにあらず、という言葉がぴったりなほど、私はあの人に心を奪われてしまった。

あの人はまるで少年のよう。
いつも屈託なく笑っていて、好奇心が旺盛で誰にでも好かれる。
誰でも平等に接し、とても親切で面白い人。
その人と何回か話しているうちに「あの人と一緒にいたら幸せだろうに」と思ってしまった。人と人との壁を越えたいと思った。“友達の壁”を越えることがあれほど嫌だった私が。

「随分と身勝手な感情だ。捨ててしまえ」と何度思ったことだろう。
でも捨てようと思えば思うほど、私はその感情を拾い上げてしまう。初めて抱いたこの気持ちを、捨てたくないと思ってしまった。

なんというざまだ。散々、人の好意を踏み潰して自分から逃げ出したくせに。いざ自分の番になったら捨てたくないなんて図々しいにも程がある。
でも、手放したくない。この感情から逃げたくないと思う自分がいた。

私は前の自分とは違う。冷徹な人間ではなく血の通った人間なのだと、あの人のおかげで気がついた。

私はあの人とは一緒になれない。
あの人が私のことを恋愛対象として見るはずがない。
私とあの人は離れすぎている。
お互いの距離感や年齢も。
でも、それでいい。私は何も望まない。
この気持ちを知ることができた。ただそれだけでいい。

最後に、私を愛してくれた人へ。
逃げてごめんなさい。私は弱かった。けれど今はあなたの気持ちがよくわかる。私を好きになってくれて本当にありがとう。

愛するあの人へ。
あなたが私を愛することはないでしょう。でも、まだあなたを好きでいていいですか?
何も望まないから、どうかあともう少しだけ、そばにいさせてください。