人からの好意が気持ち悪い。蛙化現象って面倒だ。

生まれて初めて人に告白された。しかも、わたしが好きだった人に。
それは、幸せな情景でわたしが求めていたもののだったはずだった。

まっすぐに想いを伝えてくれる彼に、ぼんやりと気持ち悪さを感じた

3日前。

「好きなんだ、付き合おう」
海辺が見える見晴らしの良いベンチ。心地よい潮風が、柔らかに髪を撫でる。暗い中、キラキラと光る星空。ロマンチックな雰囲気。
大好きな彼の、赤くなった表情。真っ直ぐな想い。そして、告白。

そんな絶好の幸せみたいな状況の中、わたしはぼんやりとなんか気持ち悪いな、逃げ出したいなと思った。
だって、わたしは、彼に好かれるほど魅力的じゃないから。彼には、こんな魅力ないわたしなんて好きにならずにずっと興味なさそうにしてほしかった。

友人に、その話をしたら「変人」とバッサリ切り捨てられたけれど。
だって、わたしは、目は細くて、お腹周りにはどっしりと脂肪がついていて、肌は、ニキビだらけだ。顔面偏差値30というところだし。

それに、のろまだし頭が弱い。仕事をしたら、ミスを連発する。ふつうのひとが当たり前にこなせる業務をこなせない。

わたしは他人に好かれるような価値はないから。
価値がないわたしでも恋愛ぐらいはしたいから。異性を追いかけることでその恋愛したいという欲求を満たしつつ、異性に振り向いてもらえないことで、自分の無価値さを体感し、世間と自分の思う自分が一致していることに安心したりしていた。

だから、好きな相手に好きと言われると、価値がない自分という、自分の思う自分と、他人の思う自分にズレが生じて気持ち悪くなるんだよなー。

あからさまな好意が苦しい。彼の告白に「ごめんなさい」と返した

そんなことを考えていると、彼がわたしに対し、期待するかのような、爛々とした目で見つめてきた。
きっと、彼はわたしが、承諾すると思っている。
だって、わたしから彼を何度もデートに誘ったし、スキンシップを取ったし、見つめたりした。「気になる」「あなたのことを考えてしまう」などの発言を繰り返し好意を見せつけてきた。

けど……こう、目の前で、あたたかな好意を見せつけられると苦しくなった。そんな好意受け止められないよ。
自分の自信の無さと、過度な想像力が膨らみ、わたしを支配した。
わたしは彼の告白に対し、
「ごめんなさい。むりです」
と最悪な答えを返した。

わたしは逃げたのだった。
自分を肯定してくれる数少ないこのクソみたいなわたしを受け入れてくれる人が現れたのに、拒否したのだ。
思わせぶりな態度をし、振る。客観的に見て、それはクズでビッチな女の子がやる最低な行為だろう。
けど、わたしはなぜか彼を拒否せざるを得ない感情に囚われたのだ。

その後、家に帰り自宅のベットに寝転び、悲しくなった。
なぜ、わたしはこんなにも、行動に一貫性が無いんだろう。なぜいつも好意を持たれると気持ち悪くなるんだろう。それは、自分に自信がないからなのはわかっているけれど。
でも、もっと知りたい。治したい。

好きだけど、好きと言われると気持ち悪い。いつか好きな人と幸せに…

ネットで、自分の状況について検索しているとこんな言葉にたどり着いた。
「蛙化現象」
蛙化現象とは、相手のことを好きと追いかけているときは大好きなのに、相手に好きと言われると嫌いになってしまうこと、とのことである。
解決法には、自分に自信を持つ、恋愛をたくさんする、ロマンチックさを捨てる、などがあった。

そして、蛙化現象が起こる人は、恋愛に夢みがちで、相手の足りていないところや、恋愛に伴うキスやセックスといったものに嫌悪感が強く、そのようなものが近づくと恐怖感を抱き逃げてしまう傾向にあるとのことだった。

たしかにそれは、どれもわたしには欠けているものだった。
わたしは人間と人間が恋愛し起こる性的な行動に対して生々しさと嫌悪感を感じているところがあった。
総括すると、自分は、まだまだ、精神的に未熟なのだろうなと思った。

わたしは、いつか、自分のダメなところも相手のだめなところも受け入れ、精神的に大人になる日がくるだろうか。
わたしも、いつか好きな人と恋愛をし、普通の幸せを普通に享受することが出来る様になるだろうか。

彼を振っておきながら、彼はもうわたしを忘れ、次の女の子を追いかけるのだろうなと思うと胸が締め付けられるようになり悲しくなった。
ベッドの中で、一人泣いた。

やっぱり好きだったのかもしれないと思った。
好きだけど、好きと言われると気持ち悪い。この相反する面倒な気持ちを早く無くしたい。好きな人と好きになる幸せを感じたいと強く思った。