自分が小学生だったのは、もう10年以上前の話だ。大人たちが「10年前、20年前」と話すのを他人事のように聞いていた。でも、もう自分にも10年前、20年前を語れるだけの軌跡ができてしまっているのだ。

今、小学生と話をしろと言われたら、何を話していいのか分からない。
それでも、自分が小学生だった時の思い出とか、強く感じた気持ちだけはずっと残っていて、今でも手に取るように思い出せるものもある。
私は小学校を卒業してすぐ遠くの県へ引っ越してしまい、当時の友達のほとんどともう連絡を取ることができない。
だから、今会えたら伝えたいことがある人がいる。

仲良しの友達と同じ人を好きに。友達は、彼に近づくのをやめていた

小学5年生の時、意気投合しとても仲良くなった友達がいた。そして私はその年、初めて恋をした。
仲良くなった友達と私の好きな人はどちらも私と同じクラスで、グループだったわけではないが、よく話をする仲だった。

その友達も、私が好きな人のことを好きだった。直接言われたわけではないが、彼女から私の好きな人へ熱い視線が送られているのを感じ取れないほど、当時の私は鈍感ではなかった。
そしてそれは、きっと逆も然り。私もそのことを言わなかったけど、態度でバレていたんだと思う。
自分と同じ人を好きな人がいるというのは、たとえ相手が仲良しの友達だったとしても、気が気でないものだ。むしろ、仲良しだからこそ厄介だ。

彼が好きになってくれたのは私だった。両想いなことが分かってもただ仲良くしていただけだったのだけど、私たちがお互いを好きであることを知ったか感じ取ったか、友達は必要以上に彼に近づくのをやめていた。そのおかげもあったと思うが、彼と楽しい時間を過ごすことができ、幸せだった。

高校生になって彼と付き合うことに。友達が告白していたと知った

小学校を卒業し、私は親の転勤で引っ越すことになった。対して、あとの2人は隣の中学校にそのまま進学した。
好きだった彼とは、お互いのことを忘れられず高校生になってから付き合うことになったのだが、その時に驚きの事実を聞いた。

中学生になり、私がいなくなったことで友達は彼に気持ちを伝えたのだそう。
「小学生の時は、○○(私)がいて2人が両想いなことを知ってたから言わなかったけど、今なら言えるかなと思った」と、そんな感じのニュアンスで好意を伝えられたらしい。

その告白を彼は断ったらしいけど、私に遠慮してくれていたことを知って、なんとも言えない気持ちになった。
もちろん取られたくはなかったし、邪魔されたらいい気はしないけど、それを黙って自分の中で消化することは簡単なことではなかったと思う。

大学生になって知った、自分ではない誰かに好意が向いている苦しさ

そんな恋をした彼とは結局別れてしまって、大学生になった私は新しい環境でいいなと思う人ができた。いや、そんなレベルではなくもう惹かれていたと思う。
同じ人のことを好きなライバルがいたが、このときは相手から好きになってもらえたのは私ではなかった。
ライバルと呼んだが、笑顔が魅力的で性格もよく、悔しいけど負けても仕方ないと思えるような素敵な友達だった。

それでも、キャンパス内で2人の姿を見るたびに胸がえぐられるような気持ちだった。それぞれと会う分には全く問題ないけど、一緒にいるところはもう見たくないと何度も思った。そして2人は付き合い、同棲もしていた。
完敗だ。これにはもう言いようのない苦しさを感じた。これは、当時の友達と同じ思いをしたことになったのだろうか。

その気持ちを思うと、小学生ながらに黙って身を引いてくれたあの時の友達の判断は、尊敬に値するものだ。
小学生と大学生では恋愛の中身が違うというのはあるけれど、好きな気持ちとか、相手からの好意が自分ではない誰かに向いている苦しさは同じだと思っている。

今もしその友達に会えたなら、私がいる間だけでも身を引いていてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えたい。当時、どんな気持ちであの彼のことが好きだったかお互いに話してみたい。その後付き合うことができたけど、なかなかうまくいかなかったことも笑い話にしたい。

そして、もうきっと会うことはできない彼女が、大切な相手を見つけて幸せでいてくれることを願っている。