「私もある!」。恥ずかしいくらい的外れな返答をした

高校を卒業して丸1年経ったある日。ひょんなことから、SNSで同級生と再会した。
たった1年ぶりとはいえ、全く会う機会のなかった友人だ。「元気だった?」と恒例のメッセージを交わして、当たり前のように「今度遊ぼうよ」という流れになった。

私は偶然の再会が嬉しくて、「ここも良いし、こっちも行きたいんだけど」と興奮しながらトーク画面にお店のリンクを貼っていく。久しぶりに会うんだから、ゆっくり話せるところが良いよね。ここなんて新しく出来たらしいんだけど、と勝手に話を進めていく中、ピコンという通知音とともに届いたのは、
「ごめん、今電車に乗るの厳しいかも……」
という一文だった。

電車に乗れない。会わなかったこの一年で、体調を崩したのだろうか?もしくは、精神的に参ってしまって、人の多い場所はちょっと、ということかも知れない。いずれにせよ、なにかの不可抗力があって「どうしても耐えられない」ということだろう。
ちょうどこの時、自分が軽い鬱だったこともあって、「電車に乗れない=体調・精神の不調」だと想像した私は、1人で話を進めてしまったことを謝り、その次に、
「電車無理な時あるよね!私もある!」
という、今になって思えば恥ずかしいくらいに的外れな返答をしてしまった。
友人から返ってきたメッセージはこうだったのだ。
「いま妊娠中なんだ」

どう返信するのが正しいのか、分からなくなってしまった

びっくりした。本当にびっくりした。
だって、私も友人も19歳だ。去年まで高校生だったのだ。
相手は?今妊娠ということは、もしかして20歳になる前に母親になるんだろうか?成人式は子どもと?
妊娠について何の知識も無いから、なにがどのぐらいのスピードで進んでいくのか分からない。
結婚は?親には、なんて説明したんだろうか?なんと言うか、色々大丈夫なんだろうか?
私は、どう返信するのが正しいのか、分からなくなってしまった。自分の脳みそで「19歳、妊娠」と検索してみても、サジェストには「大丈夫?」しか出てこない。

既読をつけてから数十分、意を決して、母親に聞くことにした。
「高校の友達が妊娠したって。どうしよう」
「ごめんなさい」に近い言い方だった。自分が妊娠してしまったかのような動揺ぶりだ。やっぱり、真剣なアドバイスとかが必要なんだろうか。
恐る恐る顔を上げれば、母はポカンとした表情で、「おめでとう、って言えばいいじゃない」と言い放った。
拍子抜けてしまった。あまりにも基本的なことを忘れていた。そうか、妊娠っておめでたいことなんだ。

失礼な思い込みをしていた。赤ちゃんの写真を見て、私は

なぜだか「10代の妊娠・出産」は悪いニュースとして取り上げられがちだ。私だって、そんな話題を見かける度に「他人がそんな風に言わなくても」と思っていたはずだ。
それでも、実際に10代の妊娠に触れて、心配したし、反射的にネガティブな知らせとして受け取った。「妊娠=大丈夫?」という、悲観的な想像しかしていなかった。「妊娠『してしまった』」とすら思い込んでいた。
友人にも、お子さんにも失礼だ。あまりにも恥ずかしい思い込みだ。命が宿って、産まれて、一緒に生きていくことが、どうしたって悲観的なはずがないじゃないか。

その後しばらくして、友人から写真が送られてきた。友人の腕に抱かれた、赤ちゃんの写真だ。
なんだか泣きそうになった。同い年の友人が新しい命を産んで、その子が成長して、勉強したり遊んだり、色んなことを経験していくんだ。
母親になるということは、たとえ何歳だろうが、どんな人だろうが、尊くて、素敵で、おめでたくて、他人がとやかく言えるような、そんな些細なことじゃ、全然ないのです。

友人と、日々どんどん大きくなっている息子さんへ。
心から「おめでとう」。