無能。居てもいなくても良い存在。
それらの言葉は、人の存在を全否定する言葉である。そして、その言葉は「必ず集団の中の1人」という属性に付随して放たれる。
放たれた数々の言葉の弾丸は、自分自身の自己肯定感を大きく砕け散らせた。しかし、今振り返れば、その言葉は回り回って、その弾丸を放った人たちに返ってきているように思う。それは何十倍もの恐ろしい威力となって。
新入生を入部させ、情報発信にも取り組んだ私が言われた言葉
私は過去にとある部活に所属していた。廃部一歩手前の部活であった。
そこで私は、新入生勧誘のリーダーに立候補した。なんとなく、自分たちの怠惰さで部活が廃部になるのが嫌だったからだ。
同期をひっぱり、何とかして廃部にならない程度の人数の新入生を入れた。SNSも使い、同じ部活をしている他の学校とも積極的に交流した。部活の様子や部活にちなんだ豆知識など、情報発信にも力を入れた。
そんな私が部活で言われてきた言葉は、「使えない奴」「替えがきく奴」「役立たず」である。きっかけは、以前卒業したとある先輩だ。
その先輩は、かつて部活で幅を利かせていた。私は部活で先輩からいじめにあっていた。
いじめられたきっかけは、「プライベートのSNSのフォロワー数が、先輩より多かったから」「公演会の時に舞台でパフォーマンスをした先輩より、観客は私との写真撮影に夢中だったから」「美形でないのにちやほやされているから」だそうだ。
私は特に悪いことはしていない。でも知らない間に先輩の自己承認欲求を私がぐしゃぐしゃにしたらしい。先輩は部活に在籍している時も在籍後も、私の評判を落とすことに必死になった。一挙一動の粗探しをした。
手柄を簡単に横取りする同期と先輩から言われたあの言葉
一番傷ついた出来事の話をする。
新入生勧誘のイベント後、卒業生との食事会に呼ばれた。新入生も一緒に行くため、彼らと唯一コミュニケーションをとれる私も行くことになった。
食事中、新入生勧誘の話題になった。その時、部活に来ず、チラシ配りもせず、新入生にすら話しかけなかった同期たちが、ここぞとばかりに「自分たちが新入生を入れた」「部活の廃部の危機を救った」とアピールし始めたのだった。
それは違うと反論する前に、例の先輩から例の言葉を言われた。しかもその先輩は新歓の期間に部室訪問をしている。新歓の様子を知っているはずだ。
その先輩は、私がどれだけ頑張ったとしても全く何もしなかったことにしたいらしい。怒りたかったし泣きたかったが、新入生を不安がらせてはいけない気持ちが勝った。必死に苦笑いで済ませた。同期への信頼感も完全に失った。
その新歓後も、部活でいくら頑張っても報われない日々を過ごした。むしろ、身に覚えのない失敗に対して平謝りする日々だった。
部活後の学校から帰る時、私は以前同じ部活にいた友人たちのことを思い出すようになった。
その友人は勘が鋭かった。その先輩の攻撃性に嫌気がさし、文句を言って辞めた。彼女のように器用に辞められなかった私は結局、体調不良になるまで続けてしまい、病休を理由にフェードアウトした。心療内科を受診したが、うつ病一歩手前の状態だったという。
私をいじめた彼らは、一人残らず就職活動に失敗したらしい
私は部活での出来事について、部活と無関係の友人たちに話をした。どの友人も口を揃えて縁を切るべきと結論を出した。
私の発した言葉には、きっと多少のバイアスがかかっている。でも、彼女たちはこの部活から出ることを必死に説得してくれた。徐々に洗脳がとけてきた。勇気を出して退部した。
ある日、かつて私が関わった新入生たちが声をかけてくれた。
新入生たちは「自分たちはたぬきちゃんが頑張っていたことを知っています」と別れの挨拶をしてくれた。私は安心して、新入生の皆に今後の部活を託した。
私は一念発起して、自分を受け入れてくれる数々の居場所を見つけた。いずれも、手柄を横取りする同期や、気に入らない後輩を集中的に攻撃する先輩はいなかった。ようやく、あの部活の環境がおかしいことに気づいた。
ある日、私より先に退部した友人と会話をする機会があった。
友人は、かつての私の同期や先輩の話をしてくれた。彼らは1人残らず就職活動が失敗したとSNSで嘆いているらしい。
「零細企業・ブラック企業に入った」「上司のパワハラ」「なりたい仕事につけなかった」の愚痴はまだマシな方で、就職後、自分の自己評価の高さのあまり、会社と軋轢を起こしてクビになった方もいるそうだ。
例の先輩は「能力の高くて優秀な」自分に見合った仕事がないから、仕事を探さずSNSで未成年に声をかけている日々を過ごしているらしい。
きっと本当に能力が高くて優秀ならば引く手数多のはずなのに、行動力がネットの範囲のみに収まっている。もったいない話である。そして、彼らは皆、SNSで過去の栄光を垂れ流している。
悪意を持って放った言葉は容赦なく返ってくる。言霊の存在を知った
就職活動の失敗や成功はその人の個人の問題ではあるが、彼ら自身は失敗したと感じている。きついことを言うが、私は彼らが失敗して当然だと思う。
なぜなら、集団で頑張ることや周りの人と協力することよりも、人の足を引っ張って自己承認欲求を満たすことを優先する人は、様々な悪影響を及ぼすからである。生産性の低下、士気の低下、いじめの発生。その人がどんなに素晴らしい能力を持っていても、全て打ち消してしまう。
そもそも、他者の人格否定を嬉々として行う人がトップの組織は、間違いなくブラックだ。新入社員すら寄り付かない。
もし、私が人事の立場なら、部活の同期や先輩は間違いなく採用しない人ばかりだ。今の私ならはっきり言える。この部活は異常だと。
私はこの出来事を通して、言霊は怖いなとつくづく思った。悪意のある放った言霊は容赦なく返ってくる。私の出来事も同じく、放った言霊はその何倍にもなって相手に人生そのものに返ってきたように思う。
私は絶対に人格否定をしないでおこう。そもそも自分がされたら嫌なことは人にしないことを改めて誓った。