ピンクに憧れているのに絶望的に似合わず、浮いてしまう私

ピンクは愛らしい色だ。いかにも“女の子らしい”色。
ふわふわなピンクのワンピース。まるで小さな妖精さんのよう……。
愛おしい、かわいらしい、守ってあげたい……と思わせる色。
それが私のイメージしているピンクだ。

私の周りにはピンクが好きな子が多かった。
ピンクのスカート、ピンクの筆箱、ピンクの巾着袋、ピンクのハンカチ。
ピンク、ピンク、ピンク……。
……教室の中には必ず“ピンク”があった。
かわいい女の子たちは、みんなピンク色を身に着けていた。ふわふわなレースのスカートと一緒に。

私にもピンクに憧れていた時期があった。
「あの子みたいにかわいくなりたい」「女の子らしくなりたい」と思ったけれど、私にはピンクが絶望的に似合わなかった。
鏡の前に映る自分の姿に何度、言ったことか……。「なぜ私はピンクが似合わないの?」と。
親は「似合うよ」「かわいいよ」と言ってくれた。けれど、ピンクを身に着けている他の子と比べると、私は明らかに浮いてしまうのだった。

それからだ。
ピンクがある教室にいるとどこか圧迫感があり、窒息しそうな気がした。

私はきっと「ピンクが似合う普通の女の子」になりたかった

私が“ピンク”に憧れていた理由は何だったのか?
今になって、そう問いかけてみる。
女の子らしいから?
みんなが着ているから?
親が喜ぶから?
“なりたい自分”になりたかったから?
考えているうちに私なりの結論が出た。
私はきっと、「ピンクが似合う普通の女の子」になりたかったのだ。

「女の子らしくない」「変わった子」
これは私が小さい頃に貼り付けられたレッテルだった。今でも言われているけれど。
スカートよりもスボンが好き。
オママゴトよりも外で遊ぶ方が好き。
花を愛でるよりも虫を捕まえるほうが好きだった。
人間関係を作るときにも私は変わっていた。女の子たちと一緒にいるよりも、寧ろ男の子たちと騒いでいるほうがどことなく安心した。

けれど高学年になっていくうちに、女の子同士がグループを作り、私はその中で過ごすことが多くなった(このような経験をしたことある人が私以外にもいるかもしれないが……)。
リーダー的な女の子はみんなの注目の的。女の子の代名詞と言っていいほど、かわいい子だった。その子の周りにいる子も、みんな女の子らしさがあった。
そんな中で私はモヤモヤした気持ちをずっと抱えていた。
かわいくなりたい。けど、私はあの子達とは違うのだ。

今では白やベージュが多いクローゼット。でも、これでいい

無理やり女の子になりたかったのか。それとも可愛くなりたかったのか。憧れの存在になりたかったのか。今となっては、真実はわからないままだ。
でも、この思いが強かったからこそ、私は今でもピンクを身につけることを躊躇しているのだろう。
クローゼットの中を見れば、白やベージュ、紺といった色が圧倒的に多い。ピンクなんて一つもない。
友達から誕生日プレゼントにもらった薄ピンクのハンカチが一枚あるだけ。

でもこれでいいのだ。無理に周りと合わせて“女の子らしく”なんてする必要もないし、わざわざピンクを身に着けて自分に絶望する必要もない。

私は自由でいたい。
窮屈だと思うことなく自分らしくいられるように。
そのためには私はピンクと決別しなければならない。
私はピンクに憧れて、女の子らしくなろうと背伸びをしすぎたのだ。

自分を縛り付ける“女らしさ”なんて捨ててしまえ。
そして自由を謳歌するのだ。