私はピンクが苦手だった。可愛いというイメージがあるピンクを身につけることが、自分にとって違和感に感じていた。持っている服もパンツばかりで、スカートを履くことはほとんどなかった。

そんな私も専門学校を卒業し、就職した先は、百貨店の美容部員だった。
美容部員として仕事を始めたころ、私は化粧に何も詳しくなかった。ではなぜ受けたのかというと、当時付き合っていた彼に「綺麗な店頭で販売の仕事どう?化粧品とか。向いてそう」と。それなら受けるだけ受けてみようと受けたところ、受かったというわけだ。

「ピンクだけでこんな種類あるんだ」それが第一印象だった

美容部員は店頭に立つ前に研修があり、そこで商品知識やマナーを身につける。私もその研修に参加した。
ここで私は「カラー」についてとても勉強した。

化粧品の中でも特に売上があるのがリップだ。さまざまなカラーがあり、プレゼントでも喜ばれる。毎日するメイクに華を与えてくれる。ピンク、オレンジ、赤、原色カラーなどさまざまな色が展開されているが「ピンク」と言っても黄色味が強いコーラルピンクや青味が強い青味ピンクもある。
当時私はブランドのリップを使ったこともなければ、色の違いを把握して使い分けることすらせず、何となくで購入し、使用していた。
「ピンクだけでこんな種類あるんだ」
それが第一印象だった。

その色の特徴をそれぞれ理解し、お客様に提案するのが我々美容部員の仕事だった。
私もさまざまなピンクのリップを試した。すると、同じピンクでも青味が強いほど可愛いイメージで、オレンジや赤みが強い程元気でポップなイメージになり、全く顔の印象が違った。
「ピンクってすごい、色によって全くイメージが変わる」と思ったと同時にとても面白かった。

ピンクと聞くとどうしても可愛らしいイメージが強くなりがちだったのが、メイクとして関わったことで私の中に大きな変化をもたらせた。
店頭には毎日さまざまなお客様がくる。そして、みんな使う用途が違っている。そして何よりお客様が求めていた色を提案できて、お客様からの「こういうピンクのリップ欲しかったんです」とニコニコ言っていただくと、「やった」と達成感が生まれ、さらにやる気が出た。

お客様のイメージに合ったメイクができると私も嬉しくなった

リップだけではなく、チークもピンクがメインとして使われ、さまざまな色味を展開していた。
「このチークは黄色味が入った肌馴染みのいいピンクなので、リップも青味が強いピンクより黄色味が入ったコーラルピンクの方がよく合いますよ」とリップとチーク同時にお客様に提案することができる。タッチアップをしてお客様のイメージに合ったメイクができると私も嬉しくなった。

プレゼントのお客様にも的確にイメージに合うように提案することを心がけ、プレゼントの受け取りを想像するとワクワクした。

おしゃれをする楽しさも仕事を始めてから知った

私の中で服にも変化があった。私は服にもあまりこだわりがなく、ラフな格好が多かった。メイクが楽しくなると、服ももう少し明るい色で流行りの服やしてみたい服装を研究するようになった。
「このメイクに、ああいう服を着たら良さそう」とおしゃれをする楽しさも仕事を始めてから思うようになった。
メイク好きな友達と買い物に行って、新作の化粧品や使ったことがないブランドの化粧品を見にいったり、商品の良さを語り合ったりもしたし、お互いの誕生日には化粧品を送り合った。

きっと現在もピンクに抵抗がある人はいると思う。私がそうだったように。
無理して身につけないといけないということはないけれど、ワンポイントのアクセでも服でもリップでも是非挑戦してみてほしい。
今までとは違った自分に出会える可能性がある。そして、そこから派生してまたさらに違う何かが生まれるかもしれない。