小学校低学年までに、「ピンク色がかわいい」と思うようになった

私が「好きな色は?」と聞かれて「ピンク!」と答えていた時期は、今までで2度ある。

1回目のピークは幼少期。
母親はよく「有名な猫のキャラクター」があしらわれた物を私に買ってくれることが多かった気がする。
物心がつく頃には、自分の周りは「赤」「ピンク」「有名な猫のキャラクター」で溢れていた。それを文句も言わず愛用していたので、きっと、当時私はこれが欲しいと言って買ってもらったのだと思う。母も、この子はきっとこういう物がお気に入りなんだと思って買ってくれていたのだと思う。
つまり私は、身の回りの与えられた物たちから、自分は「赤」「ピンク」「ハローキティ」が好きなんだ、と認識していた。

小学校入学時、ランドセルの色は「赤」。これは母が「自分の時代は、女は赤色のランドセルと決まっていた。一般的には赤だろう」という理由で選んだという。
私はそれに対して異論はなく、周りにも赤いランドセルの友だちはたくさんいるし、場違いではないと思っていた。
しかし、ピンク色のランドセルの友だちも結構たくさんいて、「ピンクの方がかわいい、ピンクのランドセルが良かった」と母に漏らしてしまったことは、今更ながら申し訳なく思う。
こうして徐々に「ピンク色がかわいい」と思うようになったのだが、これは小学校低学年までの話である。

自分に言い聞かせるように「水色が好き」になっていった

小学校低学年の頃のいじめの経験から、3年生からの新しいクラスではとにかく友だちにハブられたくない、嫌われたくないという思いが強く、友だちに合わせていれば1人になることはないと思っていた。
そんな私は友だちと仲よくするために、友だちの好みに合わせたり、友だちが持っている文房具、見ているテレビ番組、読んでいる少女向け雑誌を真似したりするようになった。
母には「よそはよそ、うちはそんなの買うお金はありません」と言われるが、雑誌売り場で「友だちと話が合わなくなったら仲よくしてもらえない、いじめられる!」なんて大げさなことを言って駄々をこね、無理矢理買ってもらったこともある。

そんな小学校中学年時代は、なぜか「水色」が好きなお友だちが多かった。
「確かに水色かわいいかも……!」
心の底からそう思っていたのかどうかは覚えていないが、それと同時に、「ピンク好きはぶりっこだよな」「ピンクって子どもっぽい(子どものくせに?)」という、今となっては理不尽過ぎる風潮ができていった。
私は「ピンク色が好きと言ったら、また仲間はずれにされてしまうのでは……?」と思うと、その流れに乗っかって、自分に言い聞かせるように「水色が好き」になっていった。

初めて気付いた“自分が”好きな色。紺色に侵食されて

2回目のピークは、それから約7年後の高校1年生の時だった。
中学校の卒業クラス会で、一足先にスマホを買ってもらった友だち同士がLINEやメールアドレスを交換している。私はその様子を眺めるだけだったのだが、当時仲よくしていた“若干不良”のやんちゃな友だちのスマホは、本体が黒で、ケースがビビッドピンクだったのだ。

私は、「黒×ピンク」という“最強な女の色”の組み合わせを見て、「かっこいい!これだ!!」と衝撃を受けた。自分のスマホを買う時には迷わず黒を選び、慣れないネット通販で自分の機種に対応するビビッドピンク色のケースを探して、“最強の女の色”を手に入れた。
当時の私は何を目指していたのかはまったく覚えていないが(笑)、高校に進学して色々な物を新調する時期に、身の回りの持ち物はどんどんピンク色に染まっていった。

しかし、中学校の時に仲よくしていた友だちとは高校では離れ、あまり会わなくなっていた。再び周りに合わせはじめた私は、ピンク色が周りから浮いてしまうことに気付いた。
無難な色、目立たなくて周りになじむ色……それが「紺色」だった。今思えば、初めて自分で気付いた“自分が”好きな色だったのだと思う。
しかし、身の回りの自分の持ち物はピンク色。スマホケース、部活道具の色、文房具、洋服……。でも、「紺色×ピンク」も悪くないのでは!?と、最初のうちは開き直っていたが、次第に紺色に侵食されていくのであった。

ピンクは自我を問う要素。コミュニケーションのための通過点にある

私にとってピンク色とは何か。
それは、自分が今までの短い人生の中で、人と上手くコミュニケーションをとるための通過点にあるアクセントカラーだったと思う。

幼少期に「与えられたピンク色」は、これまで自分が親から与えられた物の中から自分の好みを見つけ、決めてきたという子ども時代の生き方そのもの。母親の、女の子は赤かピンク、という固定観念によるものでもあると思っている。
とりあえず好きな色を聞かれれば、馬鹿の一つ覚えのように「赤」や「ピンク」と答えればよかったので、質問されても困らなかった。
小学校中学年には「嫌われるピンク色」だった。学校では、みんなと一緒じゃないとおかしい、のだ。
中学校で仲の良かった友だちが持つ「強くてかっこいいピンク色」は憧れだったが、高校ではやっぱり周りから浮いてしまった。高校の友だちからの「ピンク好きだよね?」という質問には自信を持って答えることができず、好きな理由も曖昧だったので困った。

ピンク色は、自分にとって憧れであり、自我を問う要素であったと思う。
だから、自分が自信を持って好きだと言える、自分らしい色を持ちたいと思った。

今の私が好きな色、お気に入りの色は、オレンジ色だ。
きっかけは、あるコンテンツの推しキャラクターのイメージカラーだったのだが、それ以前から周りの人に自分のイメージカラーを尋ねると、オレンジっぽいと言われることが多かった。その人たち曰く、明るい性格や、笑顔が素敵だという理由だそうで、単純に嬉しかった。
自分としては、オレンジ色を見ていると気分が明るくなったり、やる気が湧いてきたりするので、何か色を選ぶ時には自然とオレンジ色を選ぶようになった。人から似合うと言われたことだけれど、自分でも納得している。

ピンク色は苦手というわけではないが、自分には似合わないと思っている。
ピンク色は私にとって、ずっと“憧れ”なのだと思う。